大根の主張

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その言葉通り、3日後に夫はYouTuberへ変身を遂げた。 サイトでの名前はJamie――ジェイミー。 一日にして、大根顔出しYouTuberとして1000万回の再生記録を達成した。 「オイラは平和のためにこの白いボディになったのさ」 「オイラはいつでも愛がいっぱい」 「みんなで光合成しよう」 「大根になりたい? オイラみたいになるには修行が必要なのさっ」 ジェイミーはみんなから愛され、世界中から求められた。 そこに差別や偏見はない。 立派な変貌ぶりだ。 皮肉なことに、会社勤めをしていた頃より年収は格段にあがり、早々にテレビ出演も果たした夫に対し、真由子も次第に彼の生き方を認めるようになっていった。 ジェイミーは、2年後には大根平和大使になった。 そして、世界初の大根政治家へ道を模索している。 ファンに向けてのジェイミーラジオ、悩みを聞いて一緒に解決策を考える 【オイラの大根お悩みコーナー】も上々だ。 彼の出世は誰にも止められない。 最近では、巷に私も大根になりたいという人達が増えてきた。 彼は、もはやアイドル以上のモテ具合で、出歩くのも大変だ。 たまに困るのは、長風呂くらい。 「家族の愛が染み込むまでがいいのさ〜」 白いボディをうっすらと赤くさせて、これがジェイミーの口癖である。 * 「あなた、やっぱり私はあなたと結婚してよかったわ」 ある夜、真由子は素直に口にした。 「オイラもさ。そんな君もいつの日かオイラみたいになれる日がくるよ〜」 ジェイミーは短い足をソファで組んで、頭のてっぺんにある葉っぱをピンと立てる。 ほら、見てごらん 真由子は言われたとおりそっと足元を見た。 あ、白く太くなってきている。 ひょっとして 私たち…… 二人して大根になる日が近いのね? アタイ、愛を感じずにはいられないわ。 [完]
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