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夢の中で
遠くに水の滴る音がこだまする。目が機能していないのではないかと疑うほどの濃い闇の中、少女はどうにかしてそこから抜け出そうと走っていた。別段暗い所が嫌いな訳ではなかったが、このまま突っ立っているのは得策ではなさそうである。
ふと床の感触がなくなった。突然のことに悲鳴を上げる間もなく少女は滑り落ちる。地面に爪を立てて減速しようかとも考えたが落ちる速さが速さなだけに諦めることにした。下手をすると爪が剥がれそうである。曲がりくねることがなく、本当にまっすぐ落ちてゆく。
落ちた後にどうしたら良いだろうかとちらっと考えたが、突然坂が終わり、体が前に投げ出されて思わず両手を地面についた。おもむろに立ち上がり視線を下にむけて土埃を両手でパンパンと叩いて払う。とはいえ、視線を向けたところで鼻をつままれたとしてもわからないほどの暗闇だ。大して意味はない。
あれだけ滑ったのだ。擦りむいてるかもしれないと思い自分の肩や腰、足を触ってみたが痛みはあるものの傷はなさそうだと分かると、彼女は幾ばくか胸を撫で下ろした。
見えていないだけで本当は傷だらけかもしれないが。
(それにしても何もないわね)
一度目を擦り、きょろきょろと辺りを見回す。錯覚の可能性もあるが、右側にぽつりと白っぽい点が見えた気がした。走るとまた危ない気がして、ゆっくりと近づこうと足を踏み出す。そのまま歩いても一向に白い点が近づくわけでもなく、むしろ遠ざかってるように見えて、焦って結局走ってしまったが。
私は幻を見ているのだろうか?
困惑したとて、万策と言っていいほど策はなかったが他に対処方法を思いつかない。
このまま進むか逡巡しているうちに、にわかに周りが騒がしくなった。ヘヴィメタルよろしくガンガンと辺りに響いている。その音の大きさに眉を顰め耳を塞ぐか塞がないうちに、急速に闇は遠のいていった。
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