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ジリジリとけたたましく鳴る目覚まし時計を、半眼の状態で確認して上部のスイッチを押す。表示されている時間を確認し、腹筋だけで上体を起こすと、大きく伸びをした。それと同時にあくびも出る。昨日夜更かししたせいで瞼と頭が若干重たいのだ。寝る前に本を読む習慣が抜けきれないのだ。夜更かしするのは面白すぎる本が悪い。自分は悪くない、と誰に言い訳するでもなく必死に自分に言い聞かせる。
「またあの夢か」
幽子はここ一週間同じ夢を見る。最初の頃は真っ暗な中にひとりぼっちの夢だった。動こうにも動けずただ立ち尽くすだけである。坂を滑り落ちるようになったのはそれから三日経ってからだ。そして四日経った今日初めて明かりらしき物が見つかった。明らかに以前より進んでいる。
一体あの先には何があるのか。
ただの夢とは思えない。何かが起こる前兆なのかもしれないが、このペースで行くと夢の全貌が分かるのはまだまだ先のようだ。
(考えても仕方ない)
あまりぐずぐずしていると学校に遅刻するかもしれない。幽子は布団を跳ね除けてスリッパを履き、クローゼットから制服を取り出し手早く着替えた。
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