走り出す迅風

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「おはよーゆかりん。風邪は大丈夫?」 「ゆうちゃんおはよう。うん、この通り治ったよ」 「元気そうで良かった。季節の変わり目は注意しないとね」 夏風邪なら洒落にならない。かかりにくいが一度かかると二週間以上拗らせたことがあった。 「ゆうちゃんも気をつけてね……あれ、ゆうちゃん?」 「どうしたの?」 「何か変わった?」 「えっ」 (変わったことあった? じゃなくて変わった?) 紫は幽子の正体を知っているのか。紫が普通の人じゃないのは最初に会ったときから分かっていた。霊力持ちは霊力持ちをすぐに感知できるからだ。 (変わった、って聞いてきたことは私の霊力の変化に気づいたということ、よね) 紫に本当のことを話しても大丈夫だろうか。紫とは一度も気質や霊力のことは話題も登ったことはない。天野家にいることは何となく言いづらいのだ。変に周りに聞かれて噂が立つのは、双方の精神衛生上よろしくないと幽子は考えている。 「やっぱりそう思う?」 「うん。出雲大社でゆうちゃんが倒れた時に感じたものと同じなの」 紫は真剣な眼差しで幽子を見つめている。 「ねえ、何も酷いことされてない?」 「うん。そこは大丈夫なの」 「本当なの?出雲大社であんなことがあったのに」 紫はあまり納得がいってないらしい。さっきから渋面を作っていた。そのまま紫は幽子に囁く。 「じゃあなんであの人だかりからゆうちゃんを運んだ人の霊力が感じられるの?」
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