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噂話
帰りのホームルームが始まるチャイムが鳴る。
俺はそのチャイムと同時に読んでいた本のページをめくった。
俺は藤沢晶、ごくごく普通の高校一年生だ。
自分のことを説明するのはあまり得意ではないのだが……俺は独りでいることが多い。
理由は単純で、友達を作るのが苦手で友達ができなかったからだ。
幸い、俺は独りでいることが苦にはならないタイプだったから良かったが……。
チャイムから遅れること数十秒、教室のドアが開いたかと思うと、担任の先生が入ってくる。
やっと帰れる……今日はなにもないからゆっくりすることができるな。
……数学の課題が明日提出だから終わらせないといけないけど。
そんなことを考えながら、担任の先生の言っていることを軽く聞き流す。
今年の担任の先生は少し話の長い先生で、学年の中で一番ホームルームが長くなる先生と言っても過言ではない。
……何も言うことがないならさっさと終わらせてくれればいいのに。
でも、それもあと一ヶ月で学年が上がるということを考えれば我慢はできた。
学年が上がれば、担任の先生も変わるだろうし。
「それじゃあ、今日はこれでホームルームを終わります」
先生は連絡事項といつもの雑談を話し終えたのか、そう話を切り上げる。
珍しい、今日はそんなに話が長くならなかったな。
日直の号令がかかる。
さようなら、とクラスメイトたちが言い終えると、部活に行く人や友達と一緒に帰る人達で集まっていくのがわかった。
さてと、俺は家に帰ってこの本の続きを――。
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