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プロローグ
今でもまだ夢に見る
あの日の夢をーー
そして夢の終わりもいつもと同じ
徐々に小さくなっていく彼女の後ろ姿が視界から消えても尚、追いかける事さえ出来なかったのは高校生でいられた最後の日の自分。
“ さようなら ”
最後に一度だけ振り返った彼女の瞳がそう言っていた気がした。
彼女と最後に交わした言葉が、いつどこで、どんな風に交わされたものだったのか、もう思い出すことさえできない。
ただ一つだけはっきりと言えるのは、彼女が背を向けたあの瞬間から、俺という人間が彼女の人生から完全にいなくなったということ。
卒業式だったあの日、何か行動を起こしてさえいれば、今いるこの未来も少しは違っていたのだろうか。
何度自問自答を繰り返したところで答えは一つしかないのに、結局何も出来ずにただ立ち尽くしていた俺は、今もまだあの場所から一歩も動けずにいるのかもしれない。
彼女を深く傷つけた俺には、彼女を思う資格すら無いけれど。
だから
せめて、心から願う。
今の彼女の人生が
笑顔に溢れたあたたかいものであるように
どうか、どうか、幸せでありますようにと
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