忘れじの遠い眼差し

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忘れじの遠い眼差し

幼い頃、私は東京にある小さな町に住んでいた。 そこは、墓石の様に沢山の団地が立ち並んでおり、見るからに陰鬱な空気を醸し出していたのを、よく覚えている。 私は、その団地の中の1番端にある5号棟、舞ちゃんは駅に1番近い1号棟に住んでいた。 舞ちゃんの住む1号棟は、私の暮らす5号棟よりエレベーターも多く、部屋自体もとても広かった為、「きっと舞ちゃんの家はお金持ちなんだなぁ」と幼心に思っていたものだ。 そんな私と舞ちゃんの遊び場は、専ら、団地と団地の間にある小さな公園だった。 私達が子供の頃は、ジャングルジムや箱ブランコ等の沢山の遊具がまだまだ公園にあったので、夕方が過ぎ……夜になっても遊び倒していたのを覚えている。 今でこそ危険な遊具として、殆どの公園から撤去されてしまっているが、箱ブランコに乗って立ち漕ぎ等は得意になってやったものだ。 スピードを出すと舞ちゃんが喜んでくれるから、お馬鹿で単純だった私は、喜び勇んで立ち漕ぎをし、スピードを出したりもした。 それらの全てが、今になっては懐かしい……良い思い出だ。 あの思い出の公園も、危険だからと全ての遊具が撤去され、今となっては、ただの広場になってしまっているのだから。 さて、話が大分逸れてしまったが。 先ずは、私と舞ちゃんの出逢いから、話していこう。 私と舞ちゃんは、実は同じ産婦人科で産まれ、母親同士のベッドが隣の『おとなりさん』だった。 無論、そんな産まれたばかりの頃の記憶等無いのだが、それでも、物心ついた時には既に隣に彼女がいたのをよく覚えている。 何時も一緒に遊び、公園を駆けずり回っていた舞ちゃん。 私も幼馴染みとして、何時も一緒に遊び、走り回っては、よく生傷を作りまくっていたものだ。 そんな私と彼女の関係が変わってしまったのはーー私達が幼稚園生の時に起きた、ある事件のせいだった。
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