雪、恋、手の温度。

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同窓会の誘いが来た。 校庭の端に埋めたタイムカプセルを掘り返すらしい。最近の子らもそういうの、やってるのかな。現役の学生を最近の子と呼ぶ程度の年齢に、気が付けば自分もなっている。 当時好きだった相手を思い出して、うっかり名前を検索してみる。特に珍しい名前でもなく同姓同名がいくらでも見付かる。名前が同じだけでそれぞれに人生の異なる他人。結果、本人らしき人物は見当たらなかった。電子の海には彼女はいない。いるのは何処だか分からない現実と、自分の記憶の中。なんて、うっかりポエマーになりかける。なかなか手強い日々の暮らしの中、美化した思い出に酔うのくらいは許されたい。 自分が住んでいた町は学区の果てで、あと数百メートル西側になると別の学校に通う事になる。小学校は徒歩通学だった。暑かろうと寒かろうと6年間毎日片道3kmを歩いた。前世の業にしか思えなかった。中学校に上がってからは、自分達と隣のエリアだけは自転車通学。他エリアの民から羨ましがられ、業から解き放たれて逆転した心境でペダルを漕いでいた。 ただ、そのペダルの動きを止めようとする障害があった。坂だ。この町は何処へ行こうとしても坂がある。特に学校へ向かう途中、かなりの急勾配、降りて登る坂があった。だったら平坦でいいんじゃないか。しかもその坂の脇に豚の屠殺場があったから、酷い匂いがした。坂のどちら側から来ても、登る時には立ち漕ぎで大量に息を吸うのに、そのロケーション。地獄だった。業は未だ続いていた。一本隣の大きな国道であれば平坦で、出来ればそちらを通りたい。だが、親から、学校に届けを出した道以外で事故に遭うと保険が下りないからね、と釘を刺されていた。 アイツには3年片想いだった。
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