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 ********    「ペアーレモーネ公爵家令嬢、ディーナ・ペアーレモーネに、我が息子にして、リュスインテシテ国王太子、クラウス・ギールモーネとの婚約を命ずる 」  次の日、光り輝く城の広間に傅いた私は、玉座に座る陛下より、クラウス様との婚約を賜った。      あの後、大騒ぎしながら、今日の衣装を選んでくれたお母様とアンナを思い出す。  「明日なんて、いくら陛下でも唐突過ぎるんですよ 」  お母様自ら、何着かのドレスを衣装部屋で見立て、使用人に持って来させながら、本当なら新調したかったと、何度も溜め息を()いていた。  そうして選んでくれたのは、ペアーレモーネ、《真珠の月》に相応しい、艶やかな光を纏うクリーム色のドレス。  アクセサリーには、パールで埋め尽くされた幅広でカチューシャ型の上品なヘッドドレスと、大粒のパールの耳飾り。  まるでもう嫁ぐみたいですね。そう言ったら、お母様は「まさか 」と笑った。  「ディーナ、貴方が本当にお嫁に行く時はこんな物ではありませんよ 」と。  ギラリとお母様の瞳が光るのを見て、本当の結婚式が怖いと思った。    「はい。慎んでお受け致します 」  そう答えて、チラリと陛下の隣りにいるクラウス様を見ると、それに気付いたクラウス様にニコリと微笑まれて慌てて俯いた。  ヤバい。今日の推しの美貌が一段と眩し過ぎる。白いフロックコートなんて、私の目を潰しに掛かってるとしか思えない!(良い意味で!)    そこまでが儀式だったのだろう。動悸がどんどん激しくなってくる私に陛下が「ディーナ 」と声を掛けられた。  「はい 」  「君がクラウスとの結婚を決意してくれて、とても嬉しく思うよ。これで我が国の安泰は保証されたも同然だ。セルリック、君にも礼を言う 」  「いえ、これは娘本人が決めたことです。ですが、娘が幸せになれないと分かった場合は…… 」  突然のお父様の厳しい声にギョッとした。何、何?こんな晴れの日に、そんな花嫁の父みたいな事を言っていいの?って、花嫁の父なのか。  それにしても、いくら娘が可愛いったって、そんな国王陛下に対して釘を刺すみたいな。  コクンと息を飲んだら、陛下は「分かっているよ、言われなくても大切にする。ほら、クラウス 」  頷いたクラウス様が、カツンと磨かれた大理石の上を歩きながら、こちらに近付いて来る。  「ディーナ、君は今から僕の婚約者になった。半年後には、僕と結婚する 」  クラウス様が差し出した手を、私はそっと取った。クラウス様はそのまま私を立ち上がらせると、「僕の妃になるんだよ 」とアイスブルーの瞳を細めて微笑む。  その瞳の奥に揺らめく欲望を感じて、私は何か取り返しの付かないことをしてしまった気持ちになった。    
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