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絶対にアドルフ様も喜んでくれる筈。
「今の話は本当か? 」
「お兄様、聞いてらしたのね? そうです、私、クラウス殿下と結婚致しま…… 」
「この…っ、馬鹿っ! 」
けれど、アドルフ様は私が全部を言う前にどなった。余りの大きな声に、ビクッと肩が動いてしまう。
「あれ程、言ったじゃないか。殿下は、……王家はお前の力を欲しているだけだ。何のために、今までお前を外に出さなかったと…… 」
「お、にい、様? 」
私の声にハッとして、アドルフ様が顔を上げる。私はアドルフ様に手を伸ばした。
「お兄様、私は大丈夫ですよ? 」
ベッドに近寄って来たアドルフ様が、私のことを抱きしめてくれる。
「クラウス殿下に、私へのお気持ちが無いのは分かっております。でも、私はあの方のお側に居たいのです。お兄様のお役に立ちたいのです 」
そう、お2人の幸せが私の幸せなのだから。
「馬鹿なことを 」
「私のことなんか、幾らでも利用してくれて構わないのです。あ、お兄様、私がクラウス殿下と結婚したら、近衛騎士団の武術訓練を拝見することができるそうですよ? 」
そう言って笑ったら、アドルフ様の抱き締める力がぎゅっと強くなった。
「そんな、健気なことを言うなよ。俺が大切なのは、お前が幸せになることなんだ。まさか、こんなにあっさりと、クラウス殿下がお前の心を奪ってしまうとは思わなかった 」
あらアドルフ様、少し違うわ。クラウス様は最推しだけど、私はアドルフ様の隣りで幸せに微笑むクラウス様が好きなの。
「私は、アドルフお兄様のことも大好きですよ」
だから、そう言うと、アドルフ様にもう1回、「お前は馬鹿だ 」と言われてしまった。
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