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ディーナに転生していると知った瞬間、私はアドルフ様と兄妹だということに歓喜した。
アドルフ様と兄妹。……ということは、同じ屋根の下に住み、あんなことやこんなことやそんなことまで見れちゃうかもしれないと、期待でいっぱいだった。
結果……、アドルフ様が過度のシスコンだったなんて知らなかった。
否、本当は知っていた。ディーナとしての記憶で知っていたけれど、元の記憶が戻るまでは生まれた時からの刷り込みからか、それが世の中の普通だと思っていたのだ。
「どうかしましたか? まだ朝食前ですよ?」
「今日はほら、城へ登城する日だろう? きっとディーナが不安がってるだろうと思って、心配になったんだ 」
「登城? 」
「忘れたのかい? 今日は王妃様のお茶会の日だよ 」
『あぁ 』、私は心の中でポンと手を叩く。クラウス様の嫁候補選びね。
イベントでもあった、あった。王妃様は気になる良家の娘を何人か集めて、毎月お茶会を開催している。エマが初めて呼ばれたお茶会のことしか知らないけど、ディーナはその前から呼ばれてたということか。でも、ということは……、そこで大事なことに気付いた。
「クラウス様がいらっしゃるっ?!! 」
アドルフ様が肩を竦めた。
「クラウス王子? いるだろうね 」
目の前がぱあぁっと明るくなるのを感じた。やっと、クラウス様をご尊顔出来るっ!いくら公爵令嬢といえども、おいそれとは王子と会う機会など無かった。この1ヶ月、待ったよ、待った。待ったんだからー!!
「それでっ、お兄様はっ?! お兄様はお茶会に参加なさるのっ?!」
「僕? 残念だけど、僕は仕事があるから…… 」
「えぇっ?! 駄目よ、お兄様も一緒がいいわ 」
初の生クラウス様は、折角だからアドルフ様と一緒にいる所が見たい。
すると、アドルフ様がいきなり、ウッと自分の目頭を押さえるからギョッとした。
「お兄様? 」
「そんなに、僕と一緒に居たいのかい? 嬉しいよ 」
泣く程かい、この妹馬鹿め。そういう意味じゃないんだけどな。
「でもディーナのお願いでも無理なんだよ、すまない。不安なのは分かる。僕もまだ早いって父上に言ったんだが、マルグレーテ王妃からのたっての希望でね 」
いや、大丈夫。絶対に何があっても行きますから。
「乗り気でないなら、やはりこの件はお断りしようか? 」
だからっ、余計なことをしようとするのは止めてくれろ。
私は、アドルフ様のの瞳を見詰めると可愛いく小首を傾けた。
「お兄様は心配し過ぎですわ。私はお兄様の妹であり、ペアーレモーネ家の娘ですのよ。お兄様が一緒でないのは淋しいですけれど 」
目頭、本日2回目。その時、パチンと髪留めを留める音が聞こえた。
「出来たの? 」
「はい 」
鏡を見ると、ゆるく編んだ三つ編みを後ろで留めて、他はおろしただけの所謂ハーフアップのお嬢様ヘアの私が出来上がっていた。
それを見たアドルフ様が、「それだけでいいのか? 」と聞いてくる。
「それだけ? 」
「前みたいなこう、ドリル……、あっ、いや、くるくるっとした 」
アンタ、今、はっきりとドリルって言いましたね? せめて、チョココロネでしょ?!
ゲームの中のディーナは、金髪縦巻きロールで古典的ヘアスタイルのお嬢様だった。
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