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♥君との出会い♥
9年前 小学1年生だった私、渡辺 風和花は両親と近所で開催されていた花火大会に来ていた。
テレビでも中継されるくらいの大きな花火大会。
そこで私は迷子になった。
理由は簡単。たくさんの屋台が軒を連ねるなか私は、スーパーボールすくいに興味を惹かれ両親の側を離れてしまった。
両親も私が離れてしまったことに気付かなかった。
しばらくしてスーパーボールに飽きた私は両親の元に戻ろうとした。が、勿論そこに両親はいなくなっていた。
パニックになった私はしゃがみ込んで泣いてしまった。
「ママ〜!パパ〜!うわああああっっっん!どこにいるのぉぉぉ⁉︎」
そんな私を好奇の目や同情の目で見る人はいても私に声を掛けてくれる人はいなかった。
私はひとしきり泣いた後、両親を探そうとその場を離れた。
探し歩いて歩いていくうちにどんどんと薄暗い住宅街へ入ってしまった。
屋台の光は勿論、人の通りすらない真っ暗な道。100メートルおきぐらいにある街灯すら心もとなかった。
普通ならここで両親はその場にはいないことは明白だが当時の私はそんな事にまで頭が回らない程にパニックに陥っていた。
グズグズと泣きながら暗闇の中を歩いていたがとうとう疲れて街灯の下にうずくまってしまった。
あんな小さな体のどこに残っていたのか涙だけは止まらなかった。
その瞬間、涙が止まること出来事が起きた。
最悪な形で、だか。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
街灯の光が届かない位置から聞こえた。
声からして男性だった。
私は目を凝らしたが顔は見えない。
「迷子になっちゃったのかな?おじさんが送ってあげよう」
ほら、おいで。と手を伸ばしてくる。
私の本能が「この男について行ってはいけない!」と警報を鳴らす。
幼い子供に備えられた危険察知能力というものだったのだろうか。
私は恐怖で声が出ないどころか体がすくみ動くことができなかった。
痺れを切らしたのだろう。男が手を伸ばして私の腕を掴もうとしてきた。私は少し後退りをしたが、その手はもう目の前まで迫っていた。
私はもう無理だと目をぎゅっと瞑った。
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