4 Akihabara Hazard

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 フォールスホール最大の部屋、イチョウステージ。そこではハロウィンフェスティバルが行われており、多くの若者が集い騒いでいた。突然やってきたトラブルに彼らは戸惑い怯え、その恐怖の感情が多くの心獣を生んでいた。渚の父を始めとして、何人もの人員が配置されていたが、それでも足りない。想定を上回っていたのだ。 「皆さん、一度外へ避難してください!押さないで、落ち着いて避難してください!」 「臨さァん…あっちにもいますよ…」 「すみませーん!葛西さん、こっち回れますか?」 「今は中のモンを相手しておる、できるだけ持ちこたえてくれ。全く、キリがない。」 「あら、大変そうね。」 「――オマエは…」 客がほぼ避難し終えたイチョウステージ。響くような爆破音とともに、新たな戦いの火蓋が開かれた。  他方、先程零を送り出した大崎は、一人南口に残り戦っていた。中央通りや地下へ向かおうとする心獣を食い止め、且つ退治するためである。大崎は能力の有効範囲が広いが、近接戦は得意ではない。襲い掛かる心獣を素手で払うよりも、そうならないように遠くから攻撃をするスタイルの方が身にあっているのである。しかも、今回は単独で担う範囲が広い。そのため、既に喉は相当ダメージを負っていた。 (喉スプレーは…切らしていましたね。買えそうなところ…さっと買いますか。) 心獣の動きが止まっている今は隙がある、さっと買い補充しておこう。近くのコンビニに寄ろうとしたその時。 「ほえー、皆止まってるじゃない。ま、いっか。避けるだけだしー…」 (――あれは…ディスク?あの女、先輩たちが会った連中の一人の特徴そのままだ…) 障害物をよけるように、すいすいと箒にまたがり飛ぶ魔女の姿。彼女の特徴が、エリカという“ウラ”と一致しているような気がしたのだ。それに何やらディスクも手にある、間違いなく黒石一派の一人だ。スプレー代もついでに頂戴して節約といきますか、などと考えながら、大崎は店を出るとすぐに、筆談用に持っていたペンの一本を女に投げた。 「うわ危なっ!誰よ、レディに物を投げるバカは!」 「貴方が“エリカ”ですか。――ディスクは返してもらいますよ。」 「そう、アタシがエ…って、誰かいる!ねェ、この辺の奴ら止めたのアンタ?ちょっとのさばっててほしいんだけど。何か買おうとしてたんでしょ、いいの?」 「生憎、他にやるべきことがありますので。それに、学生の金銭事情舐めないで下さいよ。…色々と、貴方には頂戴したいものがありますので!」 「はァ~⁉ちょっと、付いてくるならアンタも殺すわよ~?」 「望むところです。」 大崎は持っていたジンジャーティーを一気飲みし、エリカを追いかけた。その間、言霊で箒を傾けるなどしたが、エリカも任務に必死なので膠着状態。 「ちょっとー、まだ来るのー?あんまりアンタに付き合ってる時間ないのよね、あっちいってよ!」 「ディスクを渡して遠くに行って下されば良いのですが。そう簡単にもいきませんでしょう。」 「あったり前でしょ?アタシは“サー”の目的のため、そしてアタシたち自身のため!このテロを成功させなきゃなの!」 「なら尚更、逃すわけにはいきません!」
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