4 Akihabara Hazard

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大崎は、何とかこの女を止めねばと考えていた。自分は声で命令はできても、直接攻撃することは苦手だ。相手は飛行能力者、直接攻撃はできない。何か利用できそうなもの…大崎はふと思い出し、突然立ち止まると後ろを振り向いて息を大きく吸った。命令対象は――先程から制止させていた。まだ効果はあるようなので、今なら格上でも確実に効く筈だ。 「――『女を捕えろ』」 大崎の声に応えるように、心獣たちがエリカを追う。心獣は平均的に人間の名2~3倍程の大きさであり、進むペースも速い。エリカは必死で逃げる。 「ちょっと、何よアンタたち⁉敵はあいつ!あのガキよ!」 「貴方とて人間ですから変わらないと思いますが。」 「うっさい!…あ」 箒が心獣につままれ、エリカは落下する。チェックメイトですね、と大崎は呟いた。  一方、駿河や守谷の元にも刺客は現れた。しかも二人。チェーンソーの轟音に二人分の足音が交ざり、それはだんだんと大きくなっていく。 「へェ、内部長サマと御董路の当主サマが共闘とは。面白い。」 「こらルーク、最初に名乗るのが侍だろう。初めまして、俺はホオズキさ。」 「別に僕らは侍じゃないんだけどね。宜しくするつもりもないし。」 「ひとまず、アンタらには消えてもらいましょうか。主力二人、まとめて相手してしまいましょう。」 「…望むところだ。」 両者、同時に飛び掛かる。ホオズキは駿河、ルークは守谷の方へ行き、それぞれサシでの戦いが始まった。守谷は能力を持たないので、持っていた刺又でチェーンソーを止める。 「刺又…ベタですね、つまらない。もっと派手にいかないと。結構実力はあるタチでしょうに。」 「誉め言葉として受け取っておくよ。それと、見た目にこだわらない方がいいよ。こう見えてもガッツリタトゥー入ってたりするしね。刺又もね、結構便利なんだ。こうして、攻撃を食い止めて身を守れるし。」 「…アンタ、能力とか使わないんですか?」 「使わない、というか使えないよ。そっちは能力者が多いようだし、正直今も怖いよ。君こそ、使ったりしないの?」 「奇遇ですね、俺もです。」 守谷とルーク。無能力者同士の衝突。この二人だからこそ、通じ合える部分があるのかもしれない。お互いが、そのように考えている節があった。 「…不公平だと思いませんか。能力者にだけ力があって、無能力者は守られるだけ。能力者は、命に順位を付けることができるんだ。それが許せない。――“サー”は、そんなことせず俺を受け入れてくれた。」 だから彼に従うのだと。肉体戦の中で、ルークは静かにそう答えた。彼の言わんとしていることは、守谷も共感できる。心獣に対抗できるという点で、自分たちより能力者は有利だ。でも全ての人を助けられるわけじゃない。しかし、だからといってテロに助力するのは、何か違う気がする。 「ねェ、近い環境にいるだろうルークくん。…君はどんな所にいたい?君の憧れは?」 「…何ですか、急に」 「…君は、本当にそれでいいのかい?君自身が、一番望んでいるものは何かな?…「平等」じゃなくて、「理解」とか「協力」じゃないかい?君の話を聞いていて、何か勘違いしているんじゃないかと思ったんだ。」 「…そう、かもしれません。でも…それは実現できるんですか。置いていかれたり、裏切られたりはないんですか。」
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