6人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
「その人だ。畠山さんって人。よく敷地内を見回りして、職員たちの様子を伺っているらしい。さっき上野を見たと。」
「えっ広子ちゃん帰ってきてたの?」
「正確には赤い髪の女子――あー、多分赤枝と居たんだな。子どもたちを引き連れていたと…ん?子どもたちは大丈夫?」
「まああの二人なら問題なさそうね。子どもたちは安全、と。」
どうやら、赤枝は子どもたちを逃がすために時間稼ぎをしてくれていたらしい。これならば、子どもたちを巻き添えにする未来は避けられる。三人は少しだけ肩の荷を下ろした。ならば、と古市は青森に通訳してもらおうと考えていた。
「青森くん。僕たちにはその人が見えないから、通訳してくれる?」
「あ、はい。」
「助かるよ。…畠山さん、社会治安維持局捜査一課の古市と申します。この二人や僕の友人から、この孤児院にまつわる不可解な話をお聞きしました。能力者や心獣について、此処の職員で一番詳しい人は誰ですか。その人は、今何処にいるか分かりますか。」
「あら、ストレートに聞くのね」
「今回は探りを入れる必要もなさそうですから」
それだけ答えると、古市は襟元をさっと正した。先程まで体を動かしていたので、よれていたのが気になったのだ。そうしている間に青森は屈んで耳を傾け、霊から話を聞いていた。古市に限らず、歌川も固唾を飲んで見守る。暫くして、青森は再び口を開いた。
「…やっぱりな。」
「…何か分かったの?」
「流石は元職員――地縛霊になってるらしく、この園の様子は大方分かってるようです。」
「じゃあ、やっぱりキーパーソンってのも…?」
歌川が問う。青森の顔からは明るさの一切が消え、声のトーンも一層低くなった。
「…一連の事件には、糸を引いている人物がいるらしいです。門田サクラ、此処の施設長です。」
最初のコメントを投稿しよう!