【エピローグ】

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 俺も隣に腰を下ろして、彼女のお腹にそっと手を当てる。胎内で、俺と彼女の愛の結晶が、誕生の時へと向けて育っているのを感じる。 「子供の名前……お兄様は何にしたら良いと思いますか?」 「そうだな、山野部家とは関係がない名前を付けたいかな」  くすくすと、彩華が穏やかに笑う。俺はその唇に、自分の唇を重ねる。  小説が終わって、物語が終わって、もはや二人を縛るものは何もなかった。  これから先のことは、読者にも、作者にも、誰にも知られることはない。  それが現実というものである。人々が受け入れるべき真実である。 『探偵・渦目摩訶子は明鏡止水』終。
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