クソ女神に転生時の肉体付与で消化管を上下逆につけられました。口にア×ルがついてて、もはや冒険者というより倒される側だけど、なんとか異世界で生き残ってやる。

1/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
 俺は異世界に幻想を抱いていた。  だって、そうだろ? ゲームやラノベなんかでよく見る異世界はどれもこれもきらびやかで、現世での惨めな自分を忘れさせてくれる。決して惨めとまではいかなくても、異世界で何もかもをやり直せるのだとしたら、今よりグッドな生活を送れると思っている人は多いだろう。  異世界で薬売りになるのも良し、農業をするのも良し、のんびりとスローライフを楽しむのも良し。どれもこれもグッド異世界生活だ。  しかし、俺の場合はすべてが逆だった。ゲームやラノベのような幸運とは真逆。最強の肉体とは真逆。仲間に恵まれることもなく、現世の知識で無双することもない。  何もかも、身体の内側までもが逆転してしまって、グッド異世界生活とは程遠いのだ。  だから、俺はゲームやラノベなんかとは真逆の異世界生活を送らなければいけなくなった。  そういう意味ではこの物語のタイトルを『生まれついての叛逆者』にしても良かった。  死後、俺は暗くもなく、明るくもない、寒くもなく暑くもない、ひっそりとして朦朧とした世界に呼び出されていた。 「もう説明はいらないわね。あなたを異世界に転生させてあげるわ!」  女神は一応盛り上げるかと言った感じで張り切った声を出した。別にそれほど特別なことではないのだろう。細かい説明は一切なしだった。  つまらない説明を聞かずに済むのはありがたかった。必要なことはすべて台詞にある。異世界に転生されるのだ。 「あれ? 反応が薄いわね」  女神と思しき女性が拍子抜けしたように言った。 「異世界転生っすよね? まあ大体分かるんで、さっさとしてくださいよ」  俺は言った。 「ちょっと!! 少しは食いつきなさいよ! そもそもお前は誰なんだ!! とか、ここはどこだ!! とか」 「女神さまじゃないんですか? 大体わかるんで、さっさと進めてくださいよ」 「あんた、ゲームの説明書を読まないタイプでしょ?」 「今どきゲームに説明書なんてついてませんよ。女神さまちょっと古いんじゃないですか?」 「うっさいわね!! ぶっ殺すわよ」  女神が物凄い形相で俺を睨みつけた。 「すみません……」 「私の名前はアオイ。女神アオイよ。今日は天界をつかさどる神、デュオス様が結婚なさったの。それで特別の恩赦をもって、あなたにもう一度命を授けることにするわ」 「デュオス様、結婚したんですか。おめでたいっすね」 「いまいち盛り上がらないわねえ。今の子ってみんなそうなの?」  アオイは品定めをするみたいに俺の顔を覗き込んだ。  俺だって全く不慣れな状況下に置かれれば驚いたり、取り乱したりする。どちらかというと根性はないし、感情が顔に出やすいタイプだ。だが、異世界転生は現世で予習済みなのだ。異世界に行く。酒場兼集会所でギルドに入る。クエストをこなす。魔王を倒す。  俺はまだ現世を生きてる頃からそのつもりだった。  それはまるで小学六年生になると、周囲の大人から何度も「来年から中学生になるのよ?」とか「来年は中学生だぞ」と脅しつけられる感覚に似ていた。 「死んだら異世界に行くのよ?」と現世での不甲斐なさを戒められたことはなかったけど、そういうものだと思っていたし、心の準備はできていた。  だって、キリスト教の解く煉獄とか、天国はあまり楽しそうじゃなかったし、仏教の地獄や極楽も全然ピンとこなかったのだ。それなら異世界に行けるもんだと思って暮らしてた方が楽しいと思ったのだ。実際そう思うとバンジージャンプやスカイダイビングのスリルもちょうどよく楽しめた。だってそうだろ? 仏教の地獄がどうとかって脅かされてたんじゃ、死ぬのが怖くって安心してバンジージャンプもできない。  つまり俺にとっては異世界に転生される驚きより、やっぱりここに来れたという安堵の方が大きかったのだ。   アオイは俺の心中を見透かしたように言った。 「あなたは異世界を甘く見ているようだけど、そこは現世ほど恵まれた世界ではないわ」 「まあ、そうでしょうね」 「それに、ハッキリ言ってあなたは主人公でも何でもない。ただのモブキャラよ。最強にして最悪の魔王を倒して再び現世にご帰還あそうばそうなんて、絶対にできっこないわ」  アオイの目付きは真剣だった。 「良い? 身の丈にあった生活でせいぜい二度目の人生を満喫することね」  俺は頷いた。  自分に何ができて、どんなふうに異世界を満喫するか、そんなことは行ってみなければ分からないことだ。できそうなら魔王を倒せばいいし、できそうにないなら、田舎でのんびりとすればいい。 「じゃあ、あなたの肉体を再構成します」 アオイは俺の前に手をかざすと、目を閉じて意識を集中させた。 すると周囲から光の粒から集まって来て、俺の身体に浸透していく。 俺は目を閉じて、感覚が生まれはじめたのを実感していた。  視覚に加えて、嗅覚、味覚、触覚、聴覚が復活していく。手足に感覚が戻り、足の裏に地面の感覚が広がる。 「あ、間違えた!」
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!