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ルイスと魔法の石
ルイスはベッドに横になって、じっと天井を見ていた。
そっと片手を当てた鎖骨の間には、丸い透明な石がついている。ニワトリのたまごが半分出ている感じで、かなりの存在感だった。
これは奇石と呼ばれる魔法の石で、十五才になった全人類に出現する、願うだけでゲームでいうキャラメイクができる魔法の石だ。
ルイスの使い道は決まっていた。
ドラゴンと生きるために使う。どう使えばいいのか、それはまだわかっていない。
ルイスは体を横に向けて、数々のドラゴングッズを眺めた。
これから、ドラゴン達の住むオトギの国に行って、答えを探すつもりだった。しかし、今すぐは行けないと思っていた。
オトギの国に行って、ドラゴンと暮らす。
一度行けば、もう家には戻らないだろうと思っている。
もうしばらくこうして、平和に幸せに暮らしていたいと目を閉じたルイスは、彼女のキャロルのことを思い出して目を開けた。
“キャロルともお別れかな”とルイスは苦悩に眉を寄せた。
今は考えまいと、ルイスは枕に顔を埋めて、奇石に願う理想の自分の姿を考え始めた。
こうして、目を閉じて、願がい事を言えば、奇石が輝き出して体は光に包まれる。光が消えた時、願いは叶い、奇石は消える。たった一度だけ使える奇石。
一度に複数の願いを叶えられ、キャラメイク以外にパラメータも好きに設定できる。ステータス、魔法、特殊能力、攻撃力、守備力、寿命、他にも想像できて言葉にできる願いならなんでも叶う。
さっきからどれにすべきか考えているが、一向にいい願いが浮かんでこなかった。やっぱり、いますぐオトギの国に行って探そうか? だけど、やっぱりまだ早い。まだみんなと暮らしたいと、ルイスは堂々めぐりを繰り返した。
それに、オトギの国は無法地帯だった。奇石で願いを叶えた者たちが、好き勝手に暮らしている国。
ルイスが今すぐ行きたいと言っても、行けない気がした。
どこの国でも15才になれば、大人の仲間入りと定められているが、本当に大人扱いする親や年上の者は少ない。そんなことをするのは悪人だけだと、ルイスは注意喚起をいたる所で何度も受けたくらいだ。
大人になるのも奇石を使うのも、もう少し大人になってからでも遅くないと、親達は口ぐせのように言っていて、ルイスもそんな気がしていた。
向かうのは危険な国なのだ。ルイスは奇石を使わずに取っておくため、普通の人のまま行かなければならない。
オトギの国には、母の兄の妻である叔母が居るが、一癖ある人なため、頼るのはためらっている。ひとりで冒険するのにも憧れがあった。もちろん、仲間と出会いたいが。
きっと、オトギの国は曲者揃いだ。そんな気がすると、ルイスは丸まって目を閉じた。
奇石で、どんな願いを叶えた人達がいるのだろう? 平和な国で暮らす自分には想像もつかないなと、ルイスはわくわくしながら笑みを浮かべた。
自分はどんな願いにすればいいかな? と、ルイスは何度目かで考えた。
そして、ドラゴンとキャロルを思い出す。
辺りは静かだった。窓からは、一筆書きのように海が見えた。耳をすませば波音が聞こえてきそうだと、耳をすませたが聞こえなかった。
がっかりだ。だけど、聴覚をよくしても困ることの方が多そうだなと、ルイスはまた願い事を探してしまうのだった。
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