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交流祭が開催されている今、この地域の季節はちょうど春である。ヒュアキンティア(ヒュアキントスの復活祭)に加え、他の復活祭も融合して、この辺りの春祭りのイメージは結構めちゃくちゃである。
只今上演されている劇は、“卵を持ったウサギ”を追いかける“いかれ帽子屋”の息子の冒険ものである。
終盤を迎え、主人公がダイヤの王様との巨大トランプゲームで勝利するシーンに入ったところで、ドリスはそわそわし始めた。きょろきょろとよそ見したり、足をぶらぶらさせたり、僕の髪を触ったり、ほっぺたをつついたり。
そうだ。この子、長時間じっとしているのが苦手だった。
僕の頬をぐいーっと指で押しているその手を捕まえ、僕はドリスに提案してみる。
「ドリス、ちょっと外へ出かけてみる?」
ドリスはぱっと顔を輝かせ、「うん!」と元気よく頷いた。
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