02.額 リオンとウーヴェ

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02.額 リオンとウーヴェ

 金色の嵐が飛び込んできたのは、一日の疲れをビスケットとお茶で癒していた時だった。  危うく喉を詰めそうになるのを紅茶で流し込み、相変わらず騒がしいと言いたげに見つめると、人の形をした嵐が、今更何を言う、もう何年の付き合いだと太い笑みを浮かべる。  「それよりもさぁ、もっと他に言うことあるんじゃねーの?」  その拗ねる一歩手前の声にひとつ咳払いをし、己だけが呼べる名を呼んで額にキスをすると、ただ一つの正解に到着したことを教える笑みが浮かぶ。  「お疲れ様、リーオ」  「今日も頑張ったぜー」  「ああ」  互いの仕事が終わればこうして労いの言葉とキスを交わす。  それは二人の気持ちのように付き合いだした頃から変わることのないもので、今日もそれを無事に済ませると、お返しのキスが同じ場所にひとつ。  「ビスケット美味そう!俺も食いたい!」  「手を洗ってこい」  その、常と変わらないやりとりを、諦め半分で聞いていた助手であり友人でもある彼女がため息をついたのを、気付かないフリをしてお茶の用意をするのだった。 4f0820d3-ddd4-4b88-9f16-89f9620e0953
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