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1やっちまったのか? 朝チュン
ああ、頭がぐわんぐわんする。なんかムカムカ気持ちも悪いんだけど。
マリエは額に手をやる。
別に熱があるってわけではないのね。
なんだろう、この体調の悪さ。今までに体験したことがない。
ええっと。
ここは山と海に囲まれたスヴェイナ国のバリー子爵領の家……。ああ、王都のタウンハウスか。
マリエは辺りを見回した。
スヴェイナ国は天然要塞に囲まれているため、戦火を逃れた唯一の国ともいわれ、平和を愛する国民性と知られている。
柔らかい日差しから、まだ午前中だとわかる。知っているような、見たことのある部屋だ。
でも、ここって……。私の部屋なの?
ああ、起きないと。喉が渇いたわ。
マリエは目をこする。
んん、ちょっと! ここ私の部屋じゃない!
はあ? ここ、どこ?
心臓がズンドコズンドコ音を立て、頭の血管がズキンズキンする。
どうして? どうしてこうなった?
えーと、気が遠くなるわ。
窓からは穏やかな春の日差し。ああ、今日もいい天気です。
いや、なごんでいる場合じゃない。
ちゅんちゅんと鳥が鳴いている。今日もいいお天気ですね。
いやいや、起きろ、私。なんなの、これ。
マリエは恐々とベッドの隣にいる温かい塊に目をやる。
この短い髪……。白く大きな背中……。お、男? 男なのか? 男ですよね。
ああ、なんてこった。
この人、誰? 知ってるような気がする。いや、もしかして違うかもしれないし。
ちょっと、こっち向いて。ああ、顔は見えない。やはりこいつは……。よりによって……。まさかの……。いいのか? 私。
ははは。もうやっちまったのか。
ふっ。
もう一度、意識が遠くなるのを感じた。
もう一回寝てしまおうか。ベッドは気持ちいよね。そうだ。これは夢だ。
寝たら、きっと目が覚める!
いかんいかん。現実逃避してはいけない!
マリエは頭を横に振った。
さあ、勇気を出して。そう、事実を受け止めるの。失敗しても大丈夫。人生は計画、実行、修正で、なんとかなるから。
がばっと跳ね起きて、マリエはシーツの間の自分の身体をみる。
あ。あああ。あああああああ!
あれ? あれ? かろうじて心もとない下着のみ、身に着けている。
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