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かわいい。ずっと一緒だよ。チュッチュッチュッとエンドレスリップ音。
ひー、小っ恥ずかしい。何なんだ、この記憶は。あー、穴を掘って入りたい。
脳内再生された記憶を消すように、マリエは頭を横に振る。
ううう。記憶は消えない。くぅ。黒歴史を刻んでしまった。
やっぱりこの男……、知ってる。たぶん。絶対。
このキラキラする金髪。デカい身体。私を呼ぶ甘い声。
心当たりがあるのはただ一人。えええ!? あり得ない。でも、まさか、まさかね。だって……。
マリエが体勢を変えて起きあがろうとする。
「マリエ、どこいくの?」
男はシーツの間から腕を伸ばし、マリエの腕を引っ張った。
「あっ」
バランスを崩し、マリエは再びベッドに倒れ込む。
シーツの上には、小さい赤いものが転がっている。花の形のおもちゃだ。
慌ててマリエは拾う。
これは先日商談で使った隣国向け輸出用のおもちゃのサンプルだ。卒業パーティーで取引先に見せるタイミングがなかったから、ドレスのポケットに入れておいたはず。
どうしてこんなところに? 大事なものなのに……。
私、酔っ払って何をしてるの? 昨日の私を殴ってやりたい。
「んんん、おはよ。マリエ」
男はマリエの首筋に顔を寄せ、「いい匂い。マリエの匂いだ」とつぶやいた。
「……、ちょ、ちょっと」
身体中の熱が顔に集まってくるのが分かる。
「せっかくの朝なのに、どこに行くつもりだったの? 俺を捨てる気?」
眠そうな目をこすりながら、悲し気な視線をマリエにおくる。
まるでキュンキュンと寂し気に訴える犬だ。
「ローレンス」
やはり男はローレンスだった。チーン。大事な、家族のように大切な友人なのに。ああああああ。
「マリエ……。夕べは大丈夫だった? どこも痛くない? 」
ローレンスがマリエの頬に手を伸ばし、ゆっくりと撫でる。
この雰囲気、やばいよね。ヤったな。多分……。どうしよう。これはまずい。痛くない?とか聞かれてる。ヤっちまったんだ。
マリエは頭がズキンと痛くなり、こめかみをそっと抑える。
「二日酔いだね。そんなに強くないんだから飲んじゃダメだよ。あ、俺の前ならいいけど。酔ったマリエも可愛いから」
ローレンスが軽くウインクをする。
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