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そうは言うけど、君たち三人より私は年上なんだけど。いいんだろうか。
ううう、ダメだ。ここは私が筋を通さねば!ちゃんと言えるだろうか。
マリエが気合をいれていると、馬車は無情にもローレンスの屋敷に着いたと告げた。
ドッキドキ。ひー、私大丈夫だろうか。心臓が口から出そう。
馬車から降りて、手足をギクシャクさせながら歩く。
「お待ちしておりました。旦那様と奥様がいらっしゃるお部屋にご案内します」
家令のタバスがマリエの顔を見て微笑んだ。昔と変わらず、私や弟のフランソワにも優しい。
ローレンスとキミーの屋敷は相変わらず大きくて、華やか。大きな花瓶に季節の花々が溢れんばかり飾ってあり、エントランスホールを鮮やかに彩っている。由緒ある伯爵家の体面を取り繕う大事な玄関だ。
昨夜もお邪魔したはずなのに、まるで覚えていない。
昔と変わっていないのは、壁にかけられていた織物や肖像画。懐かしいな。
ちょっと気持ちも落ち着いてきた気がする。
ふー、はー。
マリエは深呼吸をした。
家令のタバスは扉に向かう私たちを向かって、「健闘を祈ります」と呟いた。
「ご無沙汰しております。マリエと弟のフランソワです」
ローレンスとキミ―の御祖父様、御祖母様の顔を見ながらご挨拶をする。
あー、何を言ったらいいのか、さっぱりわからない。しかし、言わねば!
「あー、あー、あの! ご子息とご令嬢を私にください」
勢い余ったマリエは頭を豪快に下げる。
フランソワが「姉さん」と言って首を横に振る。
あれ? ちがった。そうだ。
「あ、キミ―と婚約させてください」
おいおい。私、大丈夫か。
キミーと婚約はフランソワだ。
私は……。
「あ、すいません。ま、間違いです。えええっと、フランソワをローレンスと婚約させて……」
違ったぁ! 完全に間違えた!!
「ちょっと、姉さん落ち着いて。大丈夫だから」
「マリエ、少し落ち着こう」
フランソワとローレンスが私の両脇を囲んだ。
「お姉さま! 頑張って!」
キミーのハートマークの目がマリエに向けられ、フランソワがマリエの前に進み出た。
ハートは僕のものにしたいらしい。やれやれ。
「僕とキミ―嬢を婚約させてください」
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