12 デビュタント

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12 デビュタント

今日はデビュタントだ。デビュタントとはいわゆる夜会の一つだけど、社交界にデビューする御令嬢にとっては大事なパーティ。 王城で開かれる大きい夜会の一つで、年ごろの貴族の御令嬢のお披露目となる。王立学校の卒業パーティーは予行練習みたいなものだ。 ここで男性も女性も婚約相手を探す場合も多いという。 王城で開かれる夜会のもう一つは年明けの夜会。こちらは新年を祝う会だ。華やかで美味しいものが食べられる素敵な夜会だけど、マリエはなぜか仕事のご挨拶でろくに楽しめていない。 くう、悔しい。 おじいさまにいうと、「夜会は仕事できているのだから当たり前」と怒られた。 商会の売り込みのチャンスだし、流行をキャッチする絶好のチャンスでもある。先方の感触もわかるのだから、おじいさまの言っていることもわかるんだけど……。 でも、ちょっとくらい美味しいものをツマミたいのよ。珍しいものをパクつきたいのよ。 しかし、ビジネス!  ビジネス優先で、いつも夜会の後は腹ペコ。屋敷に帰ってから、夜食を食べるのが常になっている。 いいけどね、うちの料理人も腕がいいもん。 デビュタントを迎えるキミ―は白いドレスを着て、髪を複雑に編んだハーフアップだ。耳元のイヤリングがキラキラと揺れている。磨きに磨きぬかれ、肌はツヤツヤ、モッチモチ。 「お姉さまも一緒に!」という、キミーからのお誘いを受けて、私たち4人、二組のカップルは夜会に参加するためにローレンスの家の侍女さんたちとうちの侍女さんたちで着付けをしてもらっていた。 昔から行き来があるから、侍女さんたちも息がぴったり。すいません、いつも大変おせわになっております。 とりあえずフランソワは王立事務次官に、ローレンスは近衛見習いになるため、それぞれ制服の正装だ。 フランソワもビシッと決めていて、立派に見えていたが、ローレンスは見惚れてしまうほどかっこよかった。 いい。すごくいい。 私って、制服の男が好きだったのだろうか。それともローレンスが好きってことなんだろうか。 ローレンスと思わず目が合ってしまい、赤面する。 もう、やだあ。 もじもじしていたら、キミ―が生暖かい目で私を見ていた。 しまった……。 「キミ―、すごく綺麗だ。白い衣装がよく似合っている」 無事婚約で来たフランソワは君を甘く見つめ、キミ―の指先に唇を落とした。 身内のイチャイチャは恥ずかしいね。 ふと目をそらすと、ローレンスが私を凝視していた。 私はというと、金糸で刺繍が施された薄いクリーム色のドレスにエメラルドのネックレスを胸元に飾っている。 「俺の色……」 ローレンスはさっとちかづいてきて、マリエを抱きしめた。 ちょっと、顔が近いって。恥ずかしいの。その制服のせいかドキドキが止まらない。 視線を感じて横を見れば、キミ―とフランソワがまた生暖かい目で私たちをみていた。 みんなに見られてます! きゃー。 マリエが嬉しそうなローレンスの身体を腕で押すが、びくともしない。 くそお、大人になりやがって。 マリエがローレンスを仰ぎ見る。
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