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「んんんん、可愛い。僕の色を着ているマリエ、このままどこにも行かず家にいようか。デビュタントはフランソワもいるし、じじいも会場にいるから大丈夫だよ」
ローレンスが頭のてっぺんにキスをしてきた。
きゃ。嬉しい。
じんわりと胸が熱くなる。
でも、ちょっと、なんだか複雑。私は年上だったはずなんだけど。なんか幼くなった気がする。それに、ああ、恥ずかしすぎる。
キミ―がかわいそうだからちゃんとデビュタント行きますよ! それにね、一応ローレンスも社交界へ顔合わせとなるんだから行かないとね。夜会は仕事場です。
この国の貴族の男性の場合、デビュタントは明確ではないの。
ローレンスとフランソワは何度か夜会にすでに出席している。ちなみに私のパートナーは、仕事のときはおじいさまか、弟。どうしてもだめな時は友人としてローレンスだった。
貴族の女性は学校を卒業した年か17歳にデビューする。それまでは夜会には出てこない。
今回、ローレンスと婚約することになって正式にパートナーとして出席するのは初めてとなる。
婚約したんだなあ。
ちらりとローレンスを見ると、ローレンスは目を細めて穏やかにマリエをみていた。
「照れてるマリエはもっと可愛い」
「ええ……」
ローレンスがマリエにキスの雨を降らせようとする。
「お化粧がはげますから、おやめください。それ以上はデビュタントのあとでどうぞ」
優秀なうちの侍女がローレンスをじろっとにらんだ。
「ちっ」
ローレンス、舌打ちしちゃだめ!
「さあ、坊ちゃん、嬢ちゃん方、楽しんできてくださいませ」
侍女さんたちが玄関先で馬車を見送ってくれた。
ちなみに馬車は二台で、坊ちゃん組と嬢ちゃん組に分けられた。馬車の中で髪型や化粧が崩れないようにだって。
ううう。赤面ものだ。
ローレンスとフランソワが地団太を踏んでいたのは見なかったことにして馬車にキミ―と乗り込んだ。
ローレンスとキミ―の御祖父様、御祖母様、うちのおじいさまは、すでに王城でまっている。
思いっきりおめかしするのは、楽しいよね。気分も上がる。しかも今回は仕事でない! ここ重要!!
入場の扉まで四人で浮かれておしゃべりしながら歩く。
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