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それに注目を浴びているのはローレンスの方だと思う。背も高く、身体つきもしっかりしているのに、いかつくない。
スマートで美男子。おまけに伯爵家の嫡男。
童話の中にでてくる王子様然だもの。そこかしこの御令嬢方が私に嫉妬視線を送ってきて、怖いくらい。
でも、私、ローレンスと婚約するんだよね。
ちらっと目線を合わせると、ローレンスは破顔した。大型犬のしっぽがぶんぶんと揺れているような感じだ。
ズキュン。
ローレンスの満開の笑顔に私の心は瀕死だ。
王太子がファーストダンスを始めた。
隣にいるのは婚約者だろう。二曲目が始まるタイミングでローレンスとフロアにでた。
ローレンスと踊るのは、王立学校に入る前だ。レッスンのために一緒に何度も踊ったっけ。
上手い! 軽い! おや?
確実にローレンスのダンス能力があがっている。いつのまに練習したんだろう?
驚いた顔で見上げると、にっとローレンスがいたずらっ子のように笑った。
「マリエと踊るのが1番楽しいし、落ち着く」
「私も……」
「これからもずっと俺と踊ってね」
「もちろん」
二人の視線が絡まる。
「このままもう一曲。いかがですか」
「ええ、そうしましょう」
さっきよりローレンスはマリエとの距離をつめ、密着度が高くなった。
なんてったって、私たち婚約しますから。
御令嬢方の小さなガッカリした悲鳴があちらこちらからあがる……。
すまないねえ。
ちょっぴり罪悪感。そして優越感。
「ローレンス様はあの方と婚約のお話が進んでいるのね」
後ろでどこかの御令嬢のがっかりした声が聞こえた。
マリエは顔が熱を持っていくのを感じた。
「マリエ……、こっちを見て」
ローレンスが甘く心地よい声で呼ぶ。
顔を向けると、蕩けるような瞳でみていた。二人だけの時が流れていく。
気がつくと二曲目の最初のフレーズが流れ始めていた。マリエとローレンスは互いに視線を絡め合い、もう一曲踊ることにする。ステップを踏み込んだその時、マリエの腕を掴んだ者がいた。
「いたっ」
マリエがつぶやく。
ローレンスはギョッとした顔だ。
「レイラ嬢!?」
「どういうことですの? 婚約は私ではご不満ということ?」
私たちの周りがシーンと静まる。
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