12 デビュタント

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それに注目を浴びているのはローレンスの方だと思う。背も高く、身体つきもしっかりしているのに、いかつくない。 スマートで美男子。おまけに伯爵家の嫡男。 童話の中にでてくる王子様然だもの。そこかしこの御令嬢方が私に嫉妬視線を送ってきて、怖いくらい。 でも、私、ローレンスと婚約するんだよね。 ちらっと目線を合わせると、ローレンスは破顔した。大型犬のしっぽがぶんぶんと揺れているような感じだ。 ズキュン。 ローレンスの満開の笑顔に私の心は瀕死だ。 王太子がファーストダンスを始めた。 隣にいるのは婚約者だろう。二曲目が始まるタイミングでローレンスとフロアにでた。 ローレンスと踊るのは、王立学校に入る前だ。レッスンのために一緒に何度も踊ったっけ。 上手い! 軽い! おや? 確実にローレンスのダンス能力があがっている。いつのまに練習したんだろう? 驚いた顔で見上げると、にっとローレンスがいたずらっ子のように笑った。 「マリエと踊るのが1番楽しいし、落ち着く」 「私も……」 「これからもずっと俺と踊ってね」 「もちろん」 二人の視線が絡まる。 「このままもう一曲。いかがですか」 「ええ、そうしましょう」 さっきよりローレンスはマリエとの距離をつめ、密着度が高くなった。 なんてったって、私たち婚約しますから。 御令嬢方の小さなガッカリした悲鳴があちらこちらからあがる……。 すまないねえ。 ちょっぴり罪悪感。そして優越感。 「ローレンス様はあの方と婚約のお話が進んでいるのね」 後ろでどこかの御令嬢のがっかりした声が聞こえた。 マリエは顔が熱を持っていくのを感じた。 「マリエ……、こっちを見て」 ローレンスが甘く心地よい声で呼ぶ。 顔を向けると、蕩けるような瞳でみていた。二人だけの時が流れていく。 気がつくと二曲目の最初のフレーズが流れ始めていた。マリエとローレンスは互いに視線を絡め合い、もう一曲踊ることにする。ステップを踏み込んだその時、マリエの腕を掴んだ者がいた。 「いたっ」 マリエがつぶやく。 ローレンスはギョッとした顔だ。 「レイラ嬢!?」 「どういうことですの? 婚約は私ではご不満ということ?」 私たちの周りがシーンと静まる。
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