12 デビュタント

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ちょっとまずいんじゃない?  いくら由緒あるレイラが伯爵令嬢でも今日はデビュタントだ。トラブルは御法度なのに。 オーケストラの演奏も止まってしまった。 慌ててマリエはローレンスの腕を絡め、目立たないようにフロアから撤退しようとした。が、ローレンスはキッとレイラを睨みつける。 もういいから、行きましょう? マリエはローレンスに無言で誘うが、ローレンスはマリエの前に庇うように立ち塞ぐ。 レイラは銀の糸を刺繍がしてある豪華な白いドレスを着ていて、雪の精霊のように美しかった。扇子で口元を隠しながら、マリエを下に見る。 レイラの艶々したプラチナブロンドの髪や青い目は、金髪のローレンスと並ぶと一対の人形のよう。 モヤモヤとローレンスの恋人が本当に私でいいのか不安になってくる。 だってレイラは若いし伯爵令嬢なんだよ。 ホール中から視線を浴びているのを感じ、マリエは眉をひそめた。 ローレンスは冷たい視線をレイラに寄せ、 「俺はマリエと婚約する。はっきり言わないとわからないのかな。俺は君には興味がない」 と宣った。 マリエの腰にあるローレンスの手が強く握られる。 ローレンスの体温がマリエの心を支えた。 「私との結婚は利益しかないわ。家格も合うし、容姿の良さもある。なぜ断るかわからないわ。もしかするとあなた、頭が悪いんじゃない? 地味な、働く貧乏子爵令嬢のどこがいいの?」 レイラは冷たい目でマリエを見る。 もちろんレイラから私に挨拶はない。突然の攻撃のみだ。 家格が上のレイラとは、今まで公式的会ったこともないし、紹介されたこともない。だからマナー上、私からは声をかけられないのだ。 とは言うものの、レイラの行為はマナー違反。 反論できないけれど、うーん、これはないよなぁ。どうしようかな。 マリエの困り顔を見て、ローレンスは目を細めた。 「マリエを愚弄するのは許さない」 ローレンスが唸り声をあげる。 ちょっと、端に移動しようよ。みんなの迷惑だよ。 あー、ローレンスが怒っちゃった。こうなると面倒なんだけど。 マリエはローレンスを引っ張って壁際にうつる。 レイラも……、あ、ついてきた。よかった……。
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