130人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょっとまずいんじゃない?
いくら由緒あるレイラが伯爵令嬢でも今日はデビュタントだ。トラブルは御法度なのに。
オーケストラの演奏も止まってしまった。
慌ててマリエはローレンスの腕を絡め、目立たないようにフロアから撤退しようとした。が、ローレンスはキッとレイラを睨みつける。
もういいから、行きましょう?
マリエはローレンスに無言で誘うが、ローレンスはマリエの前に庇うように立ち塞ぐ。
レイラは銀の糸を刺繍がしてある豪華な白いドレスを着ていて、雪の精霊のように美しかった。扇子で口元を隠しながら、マリエを下に見る。
レイラの艶々したプラチナブロンドの髪や青い目は、金髪のローレンスと並ぶと一対の人形のよう。
モヤモヤとローレンスの恋人が本当に私でいいのか不安になってくる。
だってレイラは若いし伯爵令嬢なんだよ。
ホール中から視線を浴びているのを感じ、マリエは眉をひそめた。
ローレンスは冷たい視線をレイラに寄せ、
「俺はマリエと婚約する。はっきり言わないとわからないのかな。俺は君には興味がない」
と宣った。
マリエの腰にあるローレンスの手が強く握られる。
ローレンスの体温がマリエの心を支えた。
「私との結婚は利益しかないわ。家格も合うし、容姿の良さもある。なぜ断るかわからないわ。もしかするとあなた、頭が悪いんじゃない? 地味な、働く貧乏子爵令嬢のどこがいいの?」
レイラは冷たい目でマリエを見る。
もちろんレイラから私に挨拶はない。突然の攻撃のみだ。
家格が上のレイラとは、今まで公式的会ったこともないし、紹介されたこともない。だからマナー上、私からは声をかけられないのだ。
とは言うものの、レイラの行為はマナー違反。
反論できないけれど、うーん、これはないよなぁ。どうしようかな。
マリエの困り顔を見て、ローレンスは目を細めた。
「マリエを愚弄するのは許さない」
ローレンスが唸り声をあげる。
ちょっと、端に移動しようよ。みんなの迷惑だよ。
あー、ローレンスが怒っちゃった。こうなると面倒なんだけど。
マリエはローレンスを引っ張って壁際にうつる。
レイラも……、あ、ついてきた。よかった……。
最初のコメントを投稿しよう!