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冷や汗ダラダラだわ。脇汗が心配。このドレス、好きなの。ローレンスが贈ってくれたもの。
ああ、オーケストラの音楽が流れ始めた。、よかった。
少しずつ騒めきが戻ってくる。
これって、修羅場ってやつ??
初めてだよ。
こういうのは、経験したくないね。全然よくない。
平和が1番だよ。とはいえ、ローレンスのことが好きと自覚したのに、婚約破棄とかされてはたまらない。
ここは私も闘うべきなんだろう。何ができるかわからないが。
よく観察して、隙を見て逃げる?
「ローレンス様、結婚は貴族の責務よ」
レイラは扇を広げて口元を隠す。
「ああ、そうだな。そういう見方もある。残念ながらうちは貴族の結婚に重きをおかなくても充分な家だ。だから、君がなにをいおうが、そんなメリットよりも、マリエだ。マリエとしか俺は結婚しない」
ローレンスは以後レイラのことは無視することにしたみたい。ローレンスはマリエをわざと熱く見つめ、私の頬は両手で包み込んだ。それから見せびらかすかのように、丁寧にそっと額に唇を落とした。
レイラが大きなため息をついて、周りの御令嬢方に味方になるよう視線を投げかけ始める。
やばい。泥沼になる!
そうだ! 庭にでも行く??
それとも帰る? あ、キミーとフランソワはまだフロアで踊っているわ。しかも、幸せそう。
これは無理だな。帰れないよ。
よし、バルコニーか、庭だ。
ローレンスの袖を引っ張ろうとした時
「やあ、何を揉めているんだい? こんなおめでたいデビュタントで。マリエ嬢、来ていたのか。相変わらず楚々とした美しさ。パートナーが羨ましいね」
ヴィンセント・グランフォートが穏やかな笑みを浮かべて近づいてきた。
隣国のグランフォート侯爵の息子で、おじいさまの取引先でもある。ややこしくなる予感しかない。
助け舟というより泥舟。こういう時はそっとしておいてほしかったぁ。しかし、無碍にもできない。
仕方なくマリエは愛想笑いを浮かべると、ローレンスはヴィンセント・グランフォートを睨みつけた。
ううう、なんでこうなった?
「ヴィンセント・グランフォート様、今宵はお会いできて光栄です」
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