130人が本棚に入れています
本棚に追加
「こちらこそ。マリエ嬢のおじいさまはあちらかな。マリエ嬢は今夜も美しいね。マリエ嬢とはぜひ一度ゆっくりお話しをしてみたかったんだ」
ヴィンセントは、にこりと笑った。
「えええ、あ、祖父はあのあたりでご挨拶しているかと」
「マリエ嬢に僕の国を見せてあげたいな。興味はないかい? 実は僕も留学のついでに花嫁を探しにきていてね」
え、初耳である。
たしかに商談のとき、いつもヴィンセントが伯爵側にいたのはそういうことだったのか! 初めて知りましたよ。
グランフォート家は隣国の伯爵家で、ヴィンセント様はその三男。商売に興味があるらしく、よくマリエの祖父との商談にも顔を出していたから、マリエとは顔見知りだ。
「よかったらダンスを一曲いかがかな。そこの二人は取り込み中のようだから」
ヴィンセントはマリエにウインクをしてみせる。
ローレンスは悔しそうに下唇を噛んだ。
怖い怖い。何が起きているの?
「そうですか。では、ヴィンセント様はマリエとキミー以外でお探しください」
ローレンスはマリエを背中で隠した。
「おや、マリエ嬢はダメなのかい? 」
ヴィンセントはマリエの手をとると、ローレンスがヴィンセントの手をはたき落とす。
ひー!!! 平和が1番ですよ。平和が。外交問題勃発しちゃいますから!
「ローレンス、何を揉めているんだ。マリエがかわいそうだろう?」
渋い低音の声が響いて、マリエたちは振り向いた。
「ローレンスの御祖父様! 騒がしくして、申し訳ございません」
マリエがすまなそうに応える。
「いやいや、こちらの不手際だ。ああ、レイラ嬢には第二王子から婚約の話が出ると聞いておる。だからここで騒ぐのは得策ではないと思うぞ」
ベスター伯爵の言葉にレイラは顔を青くする。それからレイラの父の方を振り返った。
レイラの父はものすごく焦った顔をしている。
そうだよねえ、ローレンスに公で振られて、さらに第二王子と婚約の話も無くなったら、目も当てられない。
レイラは「ふん」と鼻息を荒くして、何事もなかったかのように立ち去った。
ええと、あとはヴィンセント・グランフォート様ですね。
全く解さないようにヴィンセントはニコニコと笑っている。
最初のコメントを投稿しよう!