12 デビュタント

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「こちらこそ。マリエ嬢のおじいさまはあちらかな。マリエ嬢は今夜も美しいね。マリエ嬢とはぜひ一度ゆっくりお話しをしてみたかったんだ」 ヴィンセントは、にこりと笑った。 「えええ、あ、祖父はあのあたりでご挨拶しているかと」 「マリエ嬢に僕の国を見せてあげたいな。興味はないかい? 実は僕も留学のついでに花嫁を探しにきていてね」 え、初耳である。 たしかに商談のとき、いつもヴィンセントが伯爵側にいたのはそういうことだったのか! 初めて知りましたよ。 グランフォート家は隣国の伯爵家で、ヴィンセント様はその三男。商売に興味があるらしく、よくマリエの祖父との商談にも顔を出していたから、マリエとは顔見知りだ。 「よかったらダンスを一曲いかがかな。そこの二人は取り込み中のようだから」 ヴィンセントはマリエにウインクをしてみせる。 ローレンスは悔しそうに下唇を噛んだ。 怖い怖い。何が起きているの? 「そうですか。では、ヴィンセント様はマリエとキミー以外でお探しください」 ローレンスはマリエを背中で隠した。 「おや、マリエ嬢はダメなのかい? 」 ヴィンセントはマリエの手をとると、ローレンスがヴィンセントの手をはたき落とす。 ひー!!! 平和が1番ですよ。平和が。外交問題勃発しちゃいますから! 「ローレンス、何を揉めているんだ。マリエがかわいそうだろう?」 渋い低音の声が響いて、マリエたちは振り向いた。 「ローレンスの御祖父様! 騒がしくして、申し訳ございません」 マリエがすまなそうに応える。 「いやいや、こちらの不手際だ。ああ、レイラ嬢には第二王子から婚約の話が出ると聞いておる。だからここで騒ぐのは得策ではないと思うぞ」 ベスター伯爵の言葉にレイラは顔を青くする。それからレイラの父の方を振り返った。 レイラの父はものすごく焦った顔をしている。 そうだよねえ、ローレンスに公で振られて、さらに第二王子と婚約の話も無くなったら、目も当てられない。 レイラは「ふん」と鼻息を荒くして、何事もなかったかのように立ち去った。 ええと、あとはヴィンセント・グランフォート様ですね。 全く解さないようにヴィンセントはニコニコと笑っている。
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