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ただのんびり学校に行って勉強するよりも、家庭教師から教わるほうが効率がよかったし、より知りたい知識は深められたから。それだけの理由で家庭学習にしていた。
マリエは眉根を寄せて今後のことを紙に書き出した。これから私と、フランソワはどうしたらいいのか。生活は? フランソワの学校は? 少しずつ計画表を書いていく。
私は、王立学校に入らない代わりに修学試験という試験を受ければ済むだけのことだ。だがフランソワはそうもいくまい。いずれ弟のフランソワが領主になる予定だからだ。
貴族の仕事の一つは、他貴族との交流、情報交換がある。王立学校に行けば、人脈が広がるだろう。
私はすでにお父様の仕事の手伝いもしていたし、領地管理を任せられる優秀な執事もいる。
マリエは唇を固く結んだ。
心強いのは、まだ健在なおじいさまの存在だ。お父様とお母様が儚くなってしまったけれど、おじいさまの仕事を手伝いしながら、弟が成人するまで、私が中継ぎ領主になるくらいはできるだろう。
マリエは元来真面目で、慎重派だ。そして賢かった。
祖父のアントニウス・バリーは、大きな商会を経営していた。おじいさまは、いくつか叙爵されていて、この国の爵位や隣国の爵位も持っていたけれど、面倒だからといって貴族籍に名を連ねていない。
商会が大きくなり過ぎて、対外的に問題になった時、仕方なく婿に持っている爵位の中で一番低い子爵を継がせた経緯がある。
隣に住む幼なじみのローレンスとキミ―も駆けつけて、ずっとそばにいてくれた。ローレンスとキミ―は数年前に流行病で同じように父と母を亡くしていたのもあるだろう。ローレンスとキミーの御祖父様ベスタ―伯爵も、御祖母様の伯爵夫人も私たちを優しく支えてくれた。
「ずっと一緒にいるから」
「私たちはぜったい生きてそばにいるから」
ローレンスはマリエの肩を抱き、キミ―はフランソワを抱きしめた。
マリエは修学試験を受けて合格。勉強に区切りをつけ、得意な語学を生かして正式におじいさまの商会で通訳として働くことにした。
ローレンスとキミ―の祖父ベスタ―伯爵はマリエとフランソワの後見人の一人として、またマリエの祖父バリーもローレンスとキミ―の後見人の一人として扶助する関係になった。
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