12 デビュタント

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ローレンスはマリエを引き寄せ、後ろから抱きしめる。顔をマリエの首に擦り付けた。 「ちょ、ちょっと……」 「ヴィンセント、マリエは諦めろ。マリエは俺のだ」 ローレンスはマリエの腕を引っ張る。 「強引すぎるのはよくないな。こいつとでなく、僕と婚約しませんか? まだ教会に届けを出していないのでしょ? まだ間に合います」 いやいや、それもありえませんから。結婚するなら、やはりローレンスがいい。やったかやらなかったかは別にして。 ローレンスが好き。好きなんだ! やっぱり私ローレンスが好きなのよ。もう、あきらめよう。ローレンスと共に進むわ。 そろそろ自分の気持ちを認めないとね。好き。ローレンスが好きなんだと思う。足掻いても無駄。 スーッと心の中のピースがはまったように楽になった。恋に落ちるってこういうことなのね。 でも、ローレンスの後ろ盾を考えると、私のチカラでは役不足かもしれない。レイラのほうが家のことを考えると合うのかもしれない。レイラの言う通りの部分もあるのだ。 マリエは悲しそうに目を伏せた。 「僕なら君に悲しい思いはさせない。君を全てから守るよ」 ヴィンセント・グランフォートはマリエに手を差し伸べ、指先に口づけしようとした。 ローレンスがヴィンセントの胸ぐらを掴む。 事態に気がついたフランソワがあわてて駆け寄ってきて、ローレンスとヴィンセントを引き離した。 やめて! ケンカしないで。ダメよ。 「俺がマリエと結婚する」 ローレンスの声が中庭に響く。 「うん、わかったよ。結婚しよう」 よしよし。頭をなでてあげたくなるな。もう吠えなくてもいいから。そっか、じゃあ私が稼げばいいのね! 「僕は王立学校に留学していたとき、武術大会に見学に来たマリエを見て、確信したんだ。もともと仕事でも会っていたし、いいなとおもっていたしね。何より保護者の中で輝いていた」 「私だけ若かったからね」 ちーん。ヴィンセントはガックリしている。 「そういうことじゃなくて、僕はほんとうにあなたが好きなんだ」 「ええ?」 「仕事で隣国に来ただろ? 会長の隣でテキパキと通訳し、自分の意見を述べる姿に惚れたんだ。素敵だとおもったんだ」 マリエは働いていることを肯定されて、心が熱くなった。
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