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ローレンスはマリエを引き寄せ、後ろから抱きしめる。顔をマリエの首に擦り付けた。
「ちょ、ちょっと……」
「ヴィンセント、マリエは諦めろ。マリエは俺のだ」
ローレンスはマリエの腕を引っ張る。
「強引すぎるのはよくないな。こいつとでなく、僕と婚約しませんか? まだ教会に届けを出していないのでしょ? まだ間に合います」
いやいや、それもありえませんから。結婚するなら、やはりローレンスがいい。やったかやらなかったかは別にして。
ローレンスが好き。好きなんだ! やっぱり私ローレンスが好きなのよ。もう、あきらめよう。ローレンスと共に進むわ。
そろそろ自分の気持ちを認めないとね。好き。ローレンスが好きなんだと思う。足掻いても無駄。
スーッと心の中のピースがはまったように楽になった。恋に落ちるってこういうことなのね。
でも、ローレンスの後ろ盾を考えると、私のチカラでは役不足かもしれない。レイラのほうが家のことを考えると合うのかもしれない。レイラの言う通りの部分もあるのだ。
マリエは悲しそうに目を伏せた。
「僕なら君に悲しい思いはさせない。君を全てから守るよ」
ヴィンセント・グランフォートはマリエに手を差し伸べ、指先に口づけしようとした。
ローレンスがヴィンセントの胸ぐらを掴む。
事態に気がついたフランソワがあわてて駆け寄ってきて、ローレンスとヴィンセントを引き離した。
やめて! ケンカしないで。ダメよ。
「俺がマリエと結婚する」
ローレンスの声が中庭に響く。
「うん、わかったよ。結婚しよう」
よしよし。頭をなでてあげたくなるな。もう吠えなくてもいいから。そっか、じゃあ私が稼げばいいのね!
「僕は王立学校に留学していたとき、武術大会に見学に来たマリエを見て、確信したんだ。もともと仕事でも会っていたし、いいなとおもっていたしね。何より保護者の中で輝いていた」
「私だけ若かったからね」
ちーん。ヴィンセントはガックリしている。
「そういうことじゃなくて、僕はほんとうにあなたが好きなんだ」
「ええ?」
「仕事で隣国に来ただろ? 会長の隣でテキパキと通訳し、自分の意見を述べる姿に惚れたんだ。素敵だとおもったんだ」
マリエは働いていることを肯定されて、心が熱くなった。
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