13ローレンスの企み

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マリエをエスコートして、ローレンスはベスタ―伯爵の方へ歩み寄る。 マリエがあいさつすると、ベスタ―伯爵は朗らかに笑った。おまけにレイラという女が俺とマリエの仲を引き裂こうと試み始めた。 許さねえ。 せっかくこれから結婚を申し込もうと思っていたのに。俺のチャンスをつぶす気か! ギロッとにらむと、レイラは少しひるんだ様子だ。 マリエはワインを手に、肉やらスイーツなど美味しそうに食べている。 ああ、マリエのところに行きたい。 そして俺の手ずから餌付けしたい。 ローレンスはベスタ―伯爵にロクに挨拶もせずマリエのもとへ戻った。 「けっこう酔っぱらってる?」 「へへへ、そんなことないよ」 マリエはまったく赤くもなっていないし、呂律もまわっていた。 こいつ、よっぱらっても顔に出ないやつなんだな。 ローレンスは受け答えが若干幼くなったマリエを見て、いい子いい子と頭をなでたくなる衝動を抑えた。 「これね、すんごくおいしいの。はい、あーん」 マリエがフォークに肉を刺してローレンスに差し出す。 ぜったいマナー違反だが、すんごい誘惑だ。ローレンスは迷うことなく口を開けてマリエから肉をもらう。 マリエは嬉しそうに「ね? おいしいよね?」と笑った。 「マリエ、そろそろ帰ろうか」 「うん、なんだか眠くなってきた」 マリエが目をこする。 酔っぱらうと眠くなるタイプか。危険だな。やはりそばにいないと、休憩室に連れ込まれたら大変だ。 ローレンスは独り言ちた。 馬車でマリエはこくりこくりと眠り始め、ローレンスの肩で爆睡し始めた。 「ぜったいこいつに酒を飲ませてはいけない」 馬車が揺れたので、マリエの頭がずれ、壁にぶつかりそうになる。 ローレンスは慌ててマリエの頭部を手で守り、自分の膝に導いた。 これなら揺れても安全だ。 ローレンスはマリエの寝顔を見た。気持ちよさそうに眠っている。 可愛い。それに尽きる。 髪をそっと撫でてやると、マリエはふふふと笑った。 一瞬意識があったように思えたが、また眠ってしまったらしい。 結局結婚を申し込めていない。 これはまずい事態だ。今日中にマリエに結婚を申し込まないと、マリエがほかの人と婚約を結んでしまうだろう。
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