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貴族の娘として、乙女でいなければならなかったのに。私ったら性欲に負けたのよ。この私が……。そして、ローレンスと……。ああ、考えたら胸が苦しくなってきた。
「マリエ、震えてる?」
「うん、だってあの日、とんでもないことをやらかしてしまったんだもの。ローレンスの操を奪ったんでしょ」
ローレンスが私を襲うとかはないもの。口は悪いけど、いつも優しくて親切だもの。やらかしたとしたら、私だ。
「うん??」
ローレンスはちょっとだけ黒い笑みを浮かべている。
黒い笑顔も素敵。かっこいい。ふう。イケメンは何をしても様になるな。くそお。くやしい。
いかん、黒い笑みということは、肯定なんだよね。
「だって、私、ローレンスのベッドにいて、下着だった……。ローレンスは裸で」
「まあ、それは……。そうなんだけど」
ローレンスは引きつり笑いをする。
「なんか、つまりやっちゃったってことだよね? ほんとうにごめんって」
マリエはローレンスの腕をつかんで揺さぶる。ちなみにローレンスは大きいうえに体幹がいいのでびくともしない。
むきになってマリエはローレンスの身体を引っ張るが、動かない。
ローレンスは面白そうに笑いながら、マリエをギュッと抱きしめた。
「マリエ、誤解しているようだけど、そういう意味では何もなかったよ」
「え?」
マリエはびっくりした。
「まあ、正確に言うとあったんだけど」
どっちなのよ。
マリエは眉をしかめる。
「どういうこと?」
「だから、マリエが心配しているようなことはないけど、何もないわけではないってこと」
やったかやってないのかの問題は、やってないってことですか?
マリエはぱあっと目を輝かせた。
やってない。そこまで私は酔っぱらっていなかったのだ。もう金輪際アルコールは口にしないことにしよう。
「つまりやってない……ってことだよね?」
マリエは上目遣いでローレンスを見る。
「俺たちの浪漫をそんなふうに言うなあれは崇高なる浪漫だ」
ローレンスはサッと顔を赤くした。
いや、浪漫ではないと思う。
マリエは赤面する。
くう。可愛すぎるだろう。こんなかわいいローレンスがみられるなんて。
「でも、赤い花が腕についていたけど。それに下着だった」
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