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「マリエ、全く覚えていないの?」
マリエはこくんとうなずいた。
「マリエが暑いって、ポイポイと脱いだんでしょ。そのとき、おもちゃのサンプルが落ちて、サンプルの説明をしてくれて……。何か所も実演してくれたんだよ」
え? 私、バカなんでしょうか。
「ほら、赤い花だよ。花型なのに、花の形には赤くならないんだけどって、何回もやってくれたんだよ」
「面目ない」
マリエはあまりの事実に体を小さく丸め、うつむいた。
「それに、痛くなかったでしょ?」
痛くなかったとは……。何をさしているのかな、このエロ騎士!
「俺はね、ロマンチストなの。大好きなマリエをようやく手に入れたんだから、成り行きで乙女を散らすなんて絶対ないね。ちょっとくらい味見したかもしれないけど」
そ、そうですか。すいません。え? いま、味見っていった?
「味見って?」
「ううん、なんでもない」
「マリエ、結婚式の後、初夜をいっぱい楽しもうね」
腹黒さ全開のこわーい笑顔のローレンス。ひー。
ずりずりと膝の上から降りようとしたら、全力で止められた。
ワンコの尻尾ふりふりの幻覚がみえる。それから、美形大型ワンコが私の顔をペロンと舐めた。
「もう婚約したし、味見はオーケーだよね?」
ローレンスは片方の手をマリエの胸に近づける。
ええい、その手、胸からはなせ!
「まあまあ。あと少しで結婚だし、ちょっとだけね、マリエ?」
結婚式は半年後になっている。
くうう。このエロ腹黒が!
ニコニコする面構え。純粋無垢な瞳。やばい。ダメだ。好き……。降参だ。
ええーい。なんかくやしいから、こっちから仕掛けてやる!
マリエはローレンスの横顔を覗き込み、すばやく唇を奪う。
は、恥ずかしい。思いついてやったけど、ああー、もう去りたい。
よし、帰ろう。おうちに帰って、ベッドの上で悶絶しよう。
「ほぇ?」
ローレンスは固まっている。
おお、だんだん顔が赤くなってきた。ふふふ。勝負あったな。
私の顔も赤いけど、なんか勝ったって気がする。
いい気分だ。ははは。
「そんなに俺のことが好きだったんだね。マリエ~」
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