なんでもない日

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🐈  光の中で、夢を見た。夢の中で、麦と琴子は猫だった。 「にゃあ」  麦が幸せそうに鳴く。琴子も心を込めて「にゃあ」と答える。目の前を黄色い蝶々が横切ったので、琴子は急いで飛びついた。でもバランスを崩してコロン、と転がる。麦は知らん顔で、自分のお腹をざりざりと舐めている。 「もうわたし、ずっと猫でいい」  琴子が言う。 「何言ってんの。今までもずっと猫じゃない」  麦が答える。 「本当に?」 「本当に」 「にゃあ」 「にゃあ」  嬉しくなって麦にじゃれつく。そのまま二匹でお互いの尻尾を追いかけ合う。柔らかな肉球で地面を蹴ると、思いの外高く飛び上がれることに気付いて、琴子は歓喜の声を上げた。きらきらと眩しい陽の光が降り注いで、一つ大きなくしゃみをする。
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