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まずい。早く店を開けないと。
朝日が差し込む部屋で身だしなみの最終チェックをする。ギリギリ大丈夫なことを確認して階段を駆け下りた。細かい金属製のパーツが散乱したカウンターに置かれたバスケットに手を伸ばす。すると足がもつれて視界がガクンと下がった。
「ぎゃぁっ」
だめだ。今ここで転んだらお預かりしてるアクセサリーも星も、全部台無しになっちゃう!
もつれた右足を気合いで一歩前に出し、地面を踏みしめる。殺しきれなかった勢いで床についた手は薄く皮がむけてしまったが、なんとかカウンターの上を守り切った。被害は最小限だ。
立ち上がり、今度は落ち着いてバスケットを手に取った。急ぎつつもていねいに星を棚に並べる。黒い布で覆われた店内で色とりどりの星は煌めき、夜空の中にいると錯覚してしまいそうになる。
流星群の時期はたくさん星が拾えて助かるけど、夜に動かなきゃいけないからどうしても寝不足になってしまう。必然的にお客さんも増えるから仕事量と睡眠のバランスがとれない。陳列が終わり時計を見るとちょうど十時を指していた。扉の外側に掛けられているプレートをひっくり返してオープンに変える。
アミュレット・アルメリエ。幼なじみたちがくれた単語を組み合わせた単純な名前に、思わず表情が緩む。「灯す人」と「お守り」。今日も誰かを照らすお手伝いをしよう。大きく深呼吸をしてから中に戻った。
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