分かったこと

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分かったこと

彼女と接していて分かったことがある。 俺の本の好みを理解していること。 渡された本は、今すぐにでも静かな所で読みたいものばかり。 美味しいものを食べると、顔に出るタイプ。 瞳をキラキラ輝かせて、ぱあと嬉しそうな顔をする。 メイドに優しい。 何かしてもらった後に、必ず「ありがとう」と相手の目を見て言う。 聞き上手である。 つい城を抜け出して、街を歩いているとバラしてしまった。 それから、彼女がもしかしたら「あや」であるという可能性。 美味しいものを食べる時の顔、周りの者に優しい、聞き上手。 全てあやの特徴でもある。 決定的だったのは俺の本の好みだ。 3冊目に渡された詩集は美しく、夢中になる。 ここまで俺の好みを把握している側近なんていない。 レオナルドでも難しいぐらいだ。 こんな偶然なんてあるのか? アリシア嬢があやだなんて。 心臓がどくどくと、血液を忙しなく送る。 それも近い将来、結婚する相手。 こんな都合のいいことがあっていいのか? 戦争で早くに散った俺に、神が褒美でも与えたのか? だが、素直に受け入れられない。 前世でも幸せだった時に、赤紙が来たんだ。 また、夢を見させておいて、どん底に突き落とされるだろうと疑ってしまう。 日本語で喋りかけてみようか。 いや、違っていたらただの頭のおかしい男になる。 「サプライズデートは大成功だったじゃないか!やったな!」 なにも知らないで、嬉しそうな顔のレオナルド。 「次のデートはどうする?変装でもして街を歩くか?」 「王太子の側近が、そんなことを提案して大丈夫か?」 「お前の剣の腕前なら、大人数で来られない限り大丈夫だろう。それに、俺も変装してついて行くし」 悪巧みをした少年のように、ニヤリと笑う。 城で唯一の俺の味方。 彼なら話してもいいかもしれない。 「レオ、話がある。信じられないかもしれないが……」 「なんだよ、改まって。なんでも言えって」 俺の前世の事、初恋の人「あや」について。 それからアリシア嬢が、あやじゃないかと思っていること。 全てを包み隠さずに話す。 彼は一切横槍を入れずに、黙って聞いてくれた。 「前世の記憶か。聞いたことはあったが、実際に記憶を持った者の話を聞くのは初めてだ」 いつもヘラヘラ笑っている顔を、そんな顔もできるのかと言う真剣な目で俺を見る。 「お前、今失礼な事考えているな?」 「え、いや、そんなことはない」 「嘘つけ。まあ、都合がいいのに乗っかるってのもいいんじゃないか?将来結婚する相手が、前世からの想い人だなんて最高だろう。できなかったことを、彼女にたくさんしてやればいい」 前世で彼女にしてやれなかった事か…… 「今は手の届く所にいるんだ。婚約期間内はちょっとずつ、彼女が喜ぶことをする。結婚してからは、幸せにしてやれ」 幸せに……俺が彼女を。 「まだ彼女が、あやだって確信がない」 「時間なんてたっぷりあるんだ。焦らずにじっくり確かめればいいだろ」 そうか………そうだな。 「それに忘れてないか?」 「何を?」 「アリシア嬢に一目惚れ済みだってこと」
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