回避するには

1/1
前へ
/49ページ
次へ

回避するには

最初のデートから1週間ごとにやってくるアレックス王太子殿下。 お菓子やお花の他に、1冊づつ本がついてくるようになった。 それも私の好みの本ばかり! 本好きって好みまで伝わっちゃうの?昨日は徹夜で読んでじゃったわ。 本を読んだ後のあの爽快感、じんわりとくる感動。 これだけは、前世でも今世でも変わらないものね。 最近になって気になる事件が起きているの。 国外から街中に凶暴な魔獣が入り出して、人を襲うという事件が頻発しているって、お父様と執事が話しているのを聞いたの。 小説の世界では、魔王が復活する兆しとして書かれていたわ。 いよいよやってくるのね。 「聖女 有栖」 『姉様は学園に通わなくていいから、接触しないで済むはずよね』 『そうよ、そのために院に通っているの』 私は今年で18歳。成人まであと2年。 15歳で正式に王太子殿下との婚約が決まってしまった。 「王太子殿下……ごめんなさい。任せてなんて言っといて破棄できませんでした」 「気にしなくていい」 もっと攻められると思ったのに。 特に気にしている風でもないのよ。 まあそうよね、王族の決め事を公爵令嬢ごときが覆せるわけなかったのよね。彼もそう思ったのかな。 こうなったら、聖女様に頼るしかないんだけど。 形を変えて、死刑になるような気がして怖い。 『とにかく聖女に関わらない事ね。こう言う時って聖女という名の、腹黒女だっていうのが定番よ。陰湿な計画立てて、姉様を罠にかけたりするんだわ。絶対阻止してやるんだから!』 『私は弥生ちゃんが心配よ。王太子殿下が聖女様に一目惚れしちゃったら、どうするの?』 『え?』 『あれ?』 キョトンとするデビュタント以来、大人気のコーディリア。 ダンスの申し込みの列ができたぐらいよ。 『姉様、もしかして私がアレックス殿下に恋をしてるって思ってる?』 『違うの?!』 『私のは憧れよ。アイドルを見る目でしか彼をみてないよ』 なんてこと?! どうして?あんなにカッコ良くて、優しいのに。 『それより、姉様はどうなの?殿下のこと好きなんじゃないの?』 『まさか!死刑が待っているって思ったら、そんな気になれないわ』 聖女様に関わるのだけはだめ。 王太子殿下のそばにいれば、必ず聖女様と接触しちゃうじゃない。 穏やかに、気ままに本でも読んでゆっくり生きたいわ。 吾郎さんを見守りながら。 『うーん。吾郎さんかー。聖女出現の前に見付けたいけど、無理めよね。その辺が小説やゲームと違うのよ』 少しずれてきていると私も思うわ。 王太子殿下は学院に来月から通う予定だそうで。 私の所へ通う頻度が少なくなると、嘆いていたっけ。 殿下はコーディリア目当てできていると思っていたけど、どうも違うみたい。 どちらかというと、私が厳選した本を楽しみにしているように見える。 まったく、これだから本好きは。 『私が初等部から学園に入学して、様子を見てみる。聖女 有栖の風貌とかさ』 学園の初等部は10歳から入れる。 貴族なら入試はいらないんだっけ。 『くれぐれも、聖女様とは関わらないようにしてね』 『任せてよ。演技は得意なんだから』 少しの不安を隠して、コーディリアの初等部入学が決まった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加