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回避するには
最初のデートから1週間ごとにやってくるアレックス王太子殿下。
お菓子やお花の他に、1冊づつ本がついてくるようになった。
それも私の好みの本ばかり!
本好きって好みまで伝わっちゃうの?昨日は徹夜で読んでじゃったわ。
本を読んだ後のあの爽快感、じんわりとくる感動。
これだけは、前世でも今世でも変わらないものね。
最近になって気になる事件が起きているの。
国外から街中に凶暴な魔獣が入り出して、人を襲うという事件が頻発しているって、お父様と執事が話しているのを聞いたの。
小説の世界では、魔王が復活する兆しとして書かれていたわ。
いよいよやってくるのね。
「聖女 有栖」
『姉様は学園に通わなくていいから、接触しないで済むはずよね』
『そうよ、そのために院に通っているの』
私は今年で18歳。成人まであと2年。
15歳で正式に王太子殿下との婚約が決まってしまった。
「王太子殿下……ごめんなさい。任せてなんて言っといて破棄できませんでした」
「気にしなくていい」
もっと攻められると思ったのに。
特に気にしている風でもないのよ。
まあそうよね、王族の決め事を公爵令嬢ごときが覆せるわけなかったのよね。彼もそう思ったのかな。
こうなったら、聖女様に頼るしかないんだけど。
形を変えて、死刑になるような気がして怖い。
『とにかく聖女に関わらない事ね。こう言う時って聖女という名の、腹黒女だっていうのが定番よ。陰湿な計画立てて、姉様を罠にかけたりするんだわ。絶対阻止してやるんだから!』
『私は弥生ちゃんが心配よ。王太子殿下が聖女様に一目惚れしちゃったら、どうするの?』
『え?』
『あれ?』
キョトンとするデビュタント以来、大人気のコーディリア。
ダンスの申し込みの列ができたぐらいよ。
『姉様、もしかして私がアレックス殿下に恋をしてるって思ってる?』
『違うの?!』
『私のは憧れよ。アイドルを見る目でしか彼をみてないよ』
なんてこと?!
どうして?あんなにカッコ良くて、優しいのに。
『それより、姉様はどうなの?殿下のこと好きなんじゃないの?』
『まさか!死刑が待っているって思ったら、そんな気になれないわ』
聖女様に関わるのだけはだめ。
王太子殿下のそばにいれば、必ず聖女様と接触しちゃうじゃない。
穏やかに、気ままに本でも読んでゆっくり生きたいわ。
吾郎さんを見守りながら。
『うーん。吾郎さんかー。聖女出現の前に見付けたいけど、無理めよね。その辺が小説やゲームと違うのよ』
少しずれてきていると私も思うわ。
王太子殿下は学院に来月から通う予定だそうで。
私の所へ通う頻度が少なくなると、嘆いていたっけ。
殿下はコーディリア目当てできていると思っていたけど、どうも違うみたい。
どちらかというと、私が厳選した本を楽しみにしているように見える。
まったく、これだから本好きは。
『私が初等部から学園に入学して、様子を見てみる。聖女 有栖の風貌とかさ』
学園の初等部は10歳から入れる。
貴族なら入試はいらないんだっけ。
『くれぐれも、聖女様とは関わらないようにしてね』
『任せてよ。演技は得意なんだから』
少しの不安を隠して、コーディリアの初等部入学が決まった。
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