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妹、顔合わせ
頑張っている私の部屋に、お母様が満面の笑顔で入ってきた。
「アリシア、貴方に妹か弟ができるのよ」
なんと私、お姉さんになるようなの。
赤ちゃんって確か、10月10日で生まれてくるのよね。
8歳を迎える頃に、元気な妹が生まれた。
初めて妹が私にできたのよ!安定するまで会わせてもらえなかったけど。
妹は美しい母に似て、栗毛色の髪で赤に近いオレンジの瞳。
利発そうな顔で私に向かってニコッと笑う。
なんて可愛いの!
私ったら妹のコーディリアに夢中になったちゃって。
おしめの変え方だって知ってるんだから。
そうしている内に、10歳のお誕生日を迎えてしまう。
「お前に話しておきたいことがある。まだ仮ではあるが……」
お父様から聞かされたのは、アレックス王太子殿下との婚約。
しまった!忘れていた!妹に夢中になりすぎた!
本に夢中になってしまうと、何も見えなくなるのと同じ。
もう……でも、
仮だって言ってるし、まだ余地はありそうね。
こうなったら、コーディリアを王太子様の婚約者にすればいいんだわ。
今でも可愛いもの。いい考えだと思わない?!
最初はショックを受けていた私は、いい考えが浮かんでウキウキしながら王城へ向かう。我ながら単純だなぁと思った。
煌びやかな王城はとっても綺麗で豪華!
生前に読んだことがあった、お伽噺の一節のよう。
王太子様との婚約は、まだ世間には内緒のようで、王城にしては少し狭い部屋に通された。
「初めまして、アレックス=ヒュウイ=ブロンディアです」
今年で15歳になったアレックス王太子殿下が、私に向かって挨拶。
王族は美しい方が多いと、コリンナが嬉しそうに話していたけど、本当にその通りね。
豊かな銀髪の髪に、深い青色の瞳で。
でも、微笑んでいらっしゃるけどなんだか違和感がある。
「初めまして、アリシア=シャロイン=デュロイです」
可愛い若草色のドレスの端を、優雅に広げてお辞儀。
マナーも叩き込まれてきたから、自然と体が動く。
貴方には、もっと可愛い女の子を紹介するから待っていてね。
笑顔を向けると、スッと顔を背けられてしまった。
どこかおかしかったかしら?
「王様とお話があるから、殿下に庭を案内してもらいなさい」
気が進まないけど、大人の話をするからと殿下と庭に連れ出される。
私の容姿が気に入らないのかな。
若草色のドレスは我ながら似合っていて、可愛いと思うんだけど。
コーディリアほどではないけど、お顔も可愛い方よ?
「ふう」
大きなため息。
サクサクとエスコートもしないで、さっさと行ってしまう。
もしかして……貴方もこの婚約は嫌なの?
なら話が早いわ!
裾を持ち上げ、令嬢としては端なく走って殿下のすぐ後ろに立った。
「王太子殿下、私もこの婚約は反対なんです」
「え」
意表を突かれたような顔。
「きっと破棄してみせますから、安心してください」
「君は……俺との婚約が嫌なのか?」
不機嫌そうに私を睨む。
嫌なのは貴方なのでは?
「嫌というか、目的があって」
「目的?」
メイドさんたちが、不思議そうにこちらを見ている。
「周りの目がありますわ。そのベンチに座りません?」
「……」
まだ不機嫌そうなアレックス殿下。
少しぼかした方が良さそうね。
「私本が好きなんです」
バネ仕掛けのお人形のように顔を上げて、挨拶いらい初めて私の瞳を見た。
あら?アレックス殿下も本が好き?
「一生本を読んでいたいんです。図書館の人になるのが夢で」
前の人生でもそうだったから。
それに半分は嘘じゃない。
「図書館の人……」
「はい!本が好きでたくさん読んでいます」
少し表情が和んだように見える。
「王太子殿下は本が好きですか?」
「まあ、好きな方だ」
コーディリアを紹介するんなら、殿下とは繋がっていた方がいい。
「今度私がお勧めする本を、披露しますわ」
顔見せが終わった後は、どうしたってデートに行くのが普通だもの。
どうせ行くんなら、本がある場所がいい。
それとなく、妹アピールしていけばいいんじゃない?
「婚約の件は私にお任せください。いいようにしますから!」
「……変わった子だな。趣旨はわからないが、本は楽しみにしておく」
家に帰ったら、男の子が読みそうな本を選んでおかなくちゃ。
ほんと私は本が絡むとダメね。
本の方に意識がいっちゃうもの。
庭を案内してもらうのも忘れて、本の話を一方的にしてしまう。
お父様が迎えに来てくれるまで、夢中だった事は反省するわ。
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