第一話【依頼人:ユリアス・グラウディウスの願い】

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 ※  彼女からの依頼内容を把握した二人は、そのリュウトという男との決闘の日時や場所、決闘に際してのルール等を深く聞いてゆくことにした。  まず精細な情報を聞き出してから、彼女の願いをどう叶えるのかを思案しよう──という事らしい。  ユリアスは、二人に聞かれるがままに情報を提供する。   「──日時は4日後の午後1時から。場所は王都イニスの東側にある闘技場で。ルールは『お互いが死ななければ何を使ってもいい』ねェ……。なんつーか、雑だな」 「本番では少し内容が変わるかもしれませんが、大まかな概要はそんな感じです。相手は私以上のチート能力者というだけあって、明確に『これがダメ』と決められなかったんだと思います。私も私でそこそこ強い能力を持っているので、制限するといよいよ私の勝ち目が無くなるから、その配慮だと……」 「ヤな配慮だなそりゃ……」  どうやら、相手のリュウトという男は相当の手練れで、かなりの厄介者らしい。  ユリアスは、その男を倒したい、そして友人のシロヴィアを守りたい──そんな強い想いから、こんな誰もやってこないような寂れた店まで足を運んでいる。  とは言え、相手の力量も、それこそユリアスの力量さえも知らないアルス達からすると、まず彼女の力量を把握しない限りは知恵の貸しようも、願いの叶えようも無かった。  そこでアルスは、ユリアスにこう提言する。 「ひとまず、君の力を見せてくれないか。あるのだろう? 君たち異世界転生者、転移者がよく有している特殊な能力。──【ステータス】が」  昨今のファンタジーライトノベルを読んでいる読者であれば、もはや語らずとも知っているであろうステータスという単語。  簡潔に説明すれば、「自身の有する力や状態などを可視化するスキル」である。  例に漏れず、ユリアスもそのスキルを有しており、いつ如何なる状況においてもそれを確認するだけで、自身がどんな状態かを認識することができる、かなり便利なスキルである。 「まぁ、能力と言う程のものではないですけど、ステータスを表示することはできますよ。言っておきますけど、私のステータスなんてホント対したことないんで……。あまり期待しないでくださいよ?」 「ハハハ、ご謙遜を。この手のファンタジーライトノベルでよく見かける『対したこと無い』は、だいたいの確率で対したことあるからな。主人公のステータスを見たモブキャラ達が大げさにリアクションして、『主人公すげぇ!』する為の伏線のようなものだ。だからステータスを見た瞬間に『あ、あり得ない……!!』とか、『こんなステータス、見たこと無いですぅ〜!』といったリアクションをするのがお約束だ。わかったか、ドラコ」 「そんな……無理だろ。アタシなんて絶対にモブキャラなんかに収まらないキャラしてるし、何ならそこらへんの異世界チートキャラよりも強いし可愛いしで最強なのに……」 「ここに来てそのあまりにも強すぎる自己承認欲は何なんですか?」  何やらアルスが訳のわからない事を言っているが、どうやらステータスを見る時の「お約束」というものがあるらしい。(※ありません)  そんなやり取りをしつつ、ひとまずはユリアスのステータスを見てみようという事で、二人の視線が彼女へ向けられる。 「な、なんか緊張しますね、こうして見られると……」 「安心しろよユリアス。最高のリアクション見せてやるから」 「いや、それは別に誰も望んでないと思いますけど……」 「さぁ、見せてみろユリアスよ。君のステータスを。──海外の方々がよく日本のアニメを見てリアクションしている動画をこれでもかと見ているからな……。私なら、最高のリアクションをする事ができる……!」 (なんかもうリアクションに人生かけてるのか多方面にケンカ売ってるのかわかんなくなってきましたね……)  もちろんそのどちらでもなく、ただ純粋にステータスというものを実際に見た事がないからテンションがあがっているだけである。  盛り上がる二人を尻目に、ユリアスは呆れるようにため息をついた。  とりあえず見てもらおう──と、ユリアスは一呼吸置いてから、手のひらを前にかざし魔力を指先へと集中させ、「ステータス、オープン!」と告げる。  すると、ブォン!という音と同時に、ユリアスのステータスが表示された。 【名前】ユリアス・グラウディウス 【種族】人間 【性別】女 【年齢】17 【レベル】178 【体力】5680 / 5680 【魔力】98420 【攻撃】8650 【防御】3540 【知能】1400 【魔法】全属性魔法レベル50(火・風・水・土)※MAX値=100   【称号】異世界転生者 真の勇者 神の使者  【スキル】    鑑定(レベル48)ステルス(レベル35)  精神統一(レベル30)  カウンター(レベル56)  クロスカウンター(レベル45)  遠視覚(レベル40)透視覚(レベル40)  想像(クリエイト)(レベル28)  必殺(レベル90)抹殺(レベル70)  暗殺(レベル68)確殺(レベル80)  etc…………。 「「……」」 「ど、どうですかね……? まぁ、対したこと無いとは言っても、自分もそこそこ鍛えてるし? 自信が無いと言えばそれはそれで嘘になるというか──」 「ふむ。……個性が感じられない。ー50点」 「スキル欄の『殺』率が高すぎる。物騒。よってー60点」 「あと何かそこで個性出そうとしてる感あって無理。追加でー85点」 「何一つ加点されてないんですけど!? つーかさっきまでヨイショする流れだったでしょうがぁ!! だったら私を讃えろや! すごいすごいって言えやオラ!」 「情緒のヒストグラムどうなってんだオマエ」  思ってた反応と違ったようで、怒気の帯びた声を挙げるユリアス。  当然、ユリアスのステータスがすごくない訳ではないのだが……ただ純粋に、パッと見た直感でリュウトという男に「勝てない」事だけはわかった。 「まぁ、ステータスを見るに問題は無さそうだが……。これ程の力を有する君でも勝てない相手が、そのリュウトという男なのか」 「一体何者だよソイツは……。つーか、そのリュウトとかいう男のステータスとか見れたり出来ねぇのか? さっきから話で聞いたレベルの情報しかねぇぞ」 「い、一応見れますけど……」  何やら反応が鈍いユリアス。  ここに来る前……それこそ、リュウトと初めて出会った時に、スキル【鑑定】で彼のステータスは把握済みだった。  また、そのステータスを記録として保存している為、リュウトのステータスを知らない二人に見せる事だって可能なのだが、ユリアスとしてはあまり気乗りしなかった。  ──自分のステータスを見せた時のリアクションが、あまりにも薄味だったから、というクソしょーもない理由で。 「あ? んだよ何出ししぶってんだよオラ。はよ出せやコラ殺すぞ」 「いや怖っ……。少し出し渋っただけでここまで言われます……?」  しかしこのまま黙り込むと、何故かブチギレ寸前のドラコに殺される気がしたので、観念して見せることにした。  ユリアスはスキルを発動させ、空中でいくつものウインドウが表示される。そしてその中の一つをタップし、それを二人に見えるよう拡大させた。  そこに表示されているリュウトのステータスが──
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