杏奈からのお願い (命令)

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杏奈からのお願い (命令)

「…なぁに?」 杏奈の命令はほとんどがろくなもんじゃない。でも逆らったら大切な絵を破られるから、あくまで抵抗はしない。 「あーしさぁ、恋兎の事好きじゃん?」 恋兎くんの話となったら喋り方がかなり変わる。ほんとにびっくりするぐらいに。だから恋兎くんにはかなり感謝している。 「だからさ、恋兎に聞いてほしいことがあるんだ〜。」 どうして私なのだろう。自分で聞けばいいのに。 「どうして?私が恋兎くんに近づいたらだめなんじゃなかったの?」 たしかに、前そう言っていたはずなのだ。というか、いつも。絶対に恋兎くんに近づいたら許さないって言ってるよね。 「今日はまた別なのよ。あーしたち、友達でしょ?」 友だちになった覚えは一切ないけどね。 「…わかった。どういう命令?」 「あのね、好きな子の好きなところはどこ?って聞いてほしいんだけどね。あたしってさぁ、恥ずかしがり屋さんだからぁ。」 どこが恥ずかしがり屋なんだろう。私の人見知りに比べたら全くないと言っていいほどなんだけど。まぁ、そういうことにしておこう。いつものぶりっ子だし。 「うん。できるだけそれ以外の会話はしないようにするね。私みたいな陰キャでも恋兎くんは元気に話しかけてくれるでしょ?」 「うん、そうしなさい。別の話はしなくていいから聞いたらさっさと報告しに来なさい。」 自分が好きな人が褒められて嬉しかったのか弾んだ声でいった。まぁ、私そんな事全然思ってないんだけどね。 その時、ちょうど恋兎くんが登校して来た。その途端、たくさんの女子が群がった。 おぉ、こりゃあ入れやしませんわ。 「ねぇ、杏奈さん。報告、明日になるかもだけどいいですか?」 「えぇ!いいわよ。あーしに報告してくれるなら。」 やっぱ凄いな。どうして人間は人間を好きになるんだろう。訳がわからない。誰か〜人間を好きになる方法を教えて下さい〜なんて言っても誰も答えてくれないもんね。まず私がそんな事人前で言えるわけがない。
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