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「それ、いつも南田くんがしてくれてたの?」
夕方の掃除のあと、掃除道具は道具箱に入れられるものの、いつも無茶苦茶に置かれていた。
それが次の日来てみると、いつもきれいに片づけられていた。みんなそんなことには気づかず、次の日の掃除が終わると、道具はまた無茶苦茶に入れられた。
私は不思議に思っていた。
いったい誰が、掃除道具をきれいに整理してくれているのだろう?その答えが、今、目の前にあった。
「うん。まぁ」
彼は照れくさそうに苦笑いすると、バツ悪そうに道具箱の扉を閉めた。
私は自分のロッカーから取り出したシューズを持ち、体育館へ戻るため教室を出ようとした。
「堀北さん!」
堀北希美。それが私の名前。
名前を呼ばれた私は、足を止めて振り返った。
「あの…内緒にしててくれよな。今見たこと」
南田くんは猫背になって、頭をポリポリ掻きながら言った。
「うん。わかった。内緒にしとく」
私は笑顔でそう言って、教室を後にした。
その日以来、私の中で彼のことが、少しだけ特別になった。
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