わたしは ~N side~

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 彼はマメな人だった。  掃除道具に限らず、学級図書や雑巾、下駄箱の靴など、みんなの気づかないところで、それらをきれいに整理整頓していた。  誰も気づかなかったと思う。でも、私は気づいた。気づいてしまった。気が付いた時から、無意識に彼の姿を探すようになっていた。  3年になり、クラスは別々になった。私は移動教室の時など、隣のクラスの前を通る時は、必ず南田くんを探していた。  彼はみんなの輪の中で、友達の話を笑顔で聴いていた。背は高いけど、それ以外は決して目立つ存在ではなかった。  それでよかった。私だけの特別であってほしい。そんな独占欲も出てしまった。  部活が終わって遅く帰るときも、グランドにサッカー部がいないかを確認した。部活をする生徒は、8時までには校門を出なければならなかったので、7時半には練習を終え、一斉に下校していた。  南田くんの姿は見えたけど、話すことはなかった。そもそもサッカー部とバレー部は、そこまで仲がいい訳じゃない。  それでも、南田くんに会えたことが、私の心を軽くしていた。  単純に嬉しかった。
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