ぼくは ~S side~

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ぼくは ~S side~

 ショートカットの黒髪を少しだけ弾ませながら、その人は教室に入ってきた。  急に開けられたドアの音に驚いた僕は、瞬時に振り返った。右手の箒、左手にちりとりを抱えたまま。  うわ!まずいとこ見られた!  僕の顔は真っ赤だったと思う。誰もいない教室で、箒とちりとりを持っている男を、普通とは思ってはくれないだろう。 「ちょっと忘れ物しちゃって」  その人はそう言って、何事もなかったかのように、自分のロッカーへと進んでいった。  僕は何も言えないまま、箒とちりとりを道具箱に納めた。
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