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「それ、いつも南田くんがしてくれてたの?」
背中から急に声を掛けられた僕は、また身体をびくつかせた。
振り返ると、その人はシューズの入った袋を持って、僕を不思議そうに見ていた。
「うん。まぁ」
それしか言えなかった。
元々僕は口下手なのだ。
「堀北さん!」
教室を出ようとしていたその人に、僕は勇気を振り絞って声を掛けた。その人は足を止めて、僕の方を振り向いた。目と目が合った。
「あの…内緒にしててくれよな。今見たこと」
いろいろ噂されると面倒なので、一応、お願いした。
「うん。わかった。内緒にしとく」
その人は笑顔でそう言うと、教室を出て行った。
僕は部活のバックを持って、誰もいなくなった教室を後にした。
耳にはまだ、心臓の鼓動が聞こえていた。
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