わたしは ~N side~

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わたしは ~N side~

「希美、式のあとバレー部のみんなで写真撮るんだって。だから体育館に集合ね」  卒業式の前日、同じバレー部の仁美に声をかけられた。 「うん、わかった。ありがとう」  私はそう言って、軽く手を上げた。それに応えるように、仁美も手を上げた。  卒業式前日。はっきり言って、実感が湧かない。夏休みみたいに、長い休暇に入る感覚。もうここには来なくなるというのに。  でも何かそわそわする。1つの節目を迎え、新たな門出に伴う不安と期待。心の中は混沌としていた。  この時期になると、学校ではほぼ何もすることがない。高校での全課程を終え、次へのステップを踏み出す、言ってみれば踊り場的な時期。だから学校を休む人もけっこういる。  私も進学する大学が決まり、4月からは県外に出て、ひとり暮らしを始める。  家にいてもやることがないから、何となく学校へ来た。そんなカンジだ。
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