モノクロの世界だから君を見つけられた

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 一本のヒマワリがラッピングされる間、僕は幸せな事に彼女の事をじっと見ている事が出来る。  こんなにも、近くで――。  細く長い指先、水仕事も多いせいからだろうか、彼女の指先には幾つかの赤切れが目立つ。  贅沢な時間を過ごす中、脳裏に浮かぶ一つの疑問――。 『どうして、あの猫は僕にあんなにも懐いたのだろう?』  真っ白いシャツに羽織ったカーディガン、腕と胸元へと視線を向けると細い毛が数本目に付く。 『あっ……、NANAの毛』  諦めかけた恋心を繋ぎとめてくれたのは、今も高台の丘のベンチで日向ぼっこをしている白猫のNANA。初めて僕の胸で眠ったあの猫の匂いが身体に染みつき、リヴは反応したのだ。  やがて丁寧にラッピングされた一本の花束――。 英字文字が綴られた紙の外側を透き通るフィルムで巻き上げ、深い緑色のリボンが巻かれていたその花を、彼女は両手で僕に手渡すと再び手話を行う。  彼女が何を伝えているのか全ては理解できなかったが、右手の指を揃え顎につけ、お辞儀しながら右手を前に出す仕草は分かった。 『お待たせ致しました――』  いつもの様に店先迄お客様を見送る彼女、いつもと違うのは高台で見守る事無く、僕は彼女の目の前にいる。 「……」 「……」  ほんの数秒向き合う二人の時間に沈黙が続いた時、僕は心からの言葉を振り絞る。 「ずっとあなたの事が……、好きでした」 「……」  彼女は僕の言葉を耳に驚きの表情を見せる。 「これ……、 良かったら受け取って下さい」 たった今、彼女がラッピングを終えたばかりのヒマワリを、僕はそっと差し出した。
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