モノクロの世界だから君を見つけられた

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 彼女は瞳を滲ませ、そっと右手の小指で左手の甲を軽く叩き手を上にあげた。 『ありがとう……』  両手の指先を目元に近づけ、瞳を飛び出すような動きを見せる。 「えっ、ビックリしたの?」  思わず口にした僕の言葉を耳に彼女は頷きながら、両手のひらをわん曲させると親指以外の指先を自らの胸に向け、繰り返し交互に上下へと動かした。 『嬉しい……』  その手話を目にした後は、僕の瞳は滲みそれ以上、上手く彼女を見つめることは出来なかった。
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