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薬学部へと通う大学二年の春、君との出逢いは偶然だった。今でも忘れる事の無いその日は、朝から実習講義があり前日は一睡もする事なく、通学の間も資料を目で追いながら大学へと歩む。
社会の為、人のために役立ちたい一心で薬科大学へと進学したが、現実は甘いものではなかった。意味不明な化学式と想像を絶する見覚えの無い横文字の暗記分量、年間二百万円を超える学費は卒業まで六年間も払い続けなければならない。
卒業しても国家試験に合格する保証などなく、あくまで受験資格を得るため。合格はゴールではなく通過点に過ぎず、そこからが本当のスタートラインになる。決して裕福な家庭ではない。その時残るのは、総額一千万円を超える奨学金の返済。
そんな心の不安が、いつしか僕の心をモノクロに変えたのだろう。
「ドンッ!」
「きゃっ!」
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