モノクロの世界だから君を見つけられた

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 いつものベンチ、昨日の雨は嘘のように晴天が広がる。公園の砂地は水はけが良いのか水溜まり一つない。 晴空の中滑稽(こっけい)に映るベンチに結ばれたままの折り畳み傘。暖かな陽射しを遮っているからだろうか、NANAはいつも僕が座る傘の無い左側を陣取っていた。 「よっ、元気か?」 「……」  お礼など期待してはいなかったが、もしかすると『ミャー』と鳴くNANAの声を聞ける気がした。 「ふっ、お前らしくていいや。だけどちゃんといけないぞ 」  ベンチに結んだ靴ひもを解き、真っ黒い折りたたみ傘をたたむ――。 「……、 ……、 あっ……、もしかして――」  僕は手にした傘と靴紐を地面へと投げ落とすとすぐさま鞄からノートパソコンを取り出した。 「カタカタカタカタ――」  急いで両指から検索サイトへと入力された文字――、 そこには『手話の表現方法』と綴られる。 「……、 ……、 ……あった」  パソコン画面に映るイラストと、あの日、のまま彼女の取った行動を重ね合わせる。  人差し指と親指で眉間をつまむ様な仕草。手を頭の正面に立て、目線を下げる事無く前に倒しながら頭を下げる。 それは――、 お焼香でも、意味不明な行動でもなく。 「」の手話による表現だった――。 『彼女は言葉を話せなかったのだ』
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